いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ひとしずくの星」淡路帆希(富士見L文庫)

ひとしずくの星 (富士見L文庫)
ひとしずくの星 (富士見L文庫)

周期的に発生する天災『星の災禍』により、故郷と家族を失った少年・ラッカウス。今は聖都で神官としての教育を受ける彼だが、その心中には常に疑問があった。
「『星の災禍』とは何なのか」
次の犠牲者が出る前に答えを知りたい。衝動的に禁忌の森へと忍び込んだ彼は、無垢なる少女シースティと出会う。彼女に惹かれ、人目を盗んで森に通うラッカウスは知らなかった。彼女が、触れてはいけない世界の秘密に繋がっているということを……。

世界の厄災を一人で引き受ける少女と、彼女に恋した少年のボーイ・ミーツ・ガール。オーソドックスなファンタジーの世界観で童話に近い雰囲気がある。
読みやすい文章と取っ付きやすい世界観、控えめなページ数ですぐに読み終えてしまえるが、その余韻は長編に負けないくらい大きなものだった。
これはハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのか。
二人が願った「ずっといっしょ」は叶えられた。それはもう果てしなく。でも、最後は少女の涙だったことも確か。
登場人物たちの目指す幸せと目的の為に目を瞑るところが違うだけで、誰が悪かったのかは決して決められないのと同じように、どんなに考えても答えは出ないものなんだろう。
そんな考えさせられるラストな為、富士見L文庫で最も泣ける恋物語(by帯)の謳い文句には疑問があるが、「読んで良かった」と素直に思える、幼くつたない、だからこそ美しい恋物語だった。