いつも月夜に本と酒

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「グラウスタンディア皇国物語5」内堀優一(HJ文庫)

グラウスタンディア皇国物語5 (HJ文庫)
グラウスタンディア皇国物語5 (HJ文庫)

難攻不落と名高きゾラ港を見事手中に収めたクロムたちは、矢継ぎ早に次の進軍準備へと取り掛かっていた。今度の作戦は、リジア海軍司令部が鎮座する重要拠点アラティアの陥落。陸路から四つの関を突破することが最低条件とあって、今までにない激戦が予想される中、最後の皇国七聖である鍛冶屋・ウルの血縁を名乗る者がユースティナの下を訪れて―。


各国の大戦前の準備+開幕戦の序章な5巻。前回がゾラ港攻略という大きな出来事だったので、今回は繋ぎの回。
そこで見えてきたのは、グラウスタンディア、リジア、ラトルグ、各国の内部事情。
どんな国でも一枚岩という事は有り得ないが、これは……。
国の未来を憂う者の前に立ちはだかる権力と金の亡者だったり、保守的で及び腰な貴族たちをどうにかして動かさなくてはならない状況だったり。どの国も色々な思惑が渦巻く複雑怪奇な状況で、戦争する前にどこが初めに意思統一を出来るかの勝負が前哨戦といった様相を呈していた。
国内を迅速かつ強固に纏めるのは、理屈か恐怖か威光か。各国で色々な方法がとられていたが、どれも壊れやすそうで、読者という傍観者の立場からすれば先の展開が見えなくて面白い。そんな中で、外人部隊なのに統率がとれているフィフニス隊の姿は一つの答えなのかも。フィフニス=偶像(アイドル)が答えなら、それを捨て去ったラトルグの未来は……? それはいいけど、ラトルグはいつになったら本編に絡むんだ? 焦らし長いよ。
そんな訳で、どの因子がどう絡むのかという戦記ものならではの期待が膨らむ反面、人物と状況の把握で頭が疲れる内容だった。