いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「マンガの神様」蘇之一行(電撃文庫)

マンガの神様 (電撃文庫)
マンガの神様 (電撃文庫)

学校の廊下で美少女・楪葉とぶつかった日から、高校生兼新人漫画家の僕の毎日はトラブルだらけ。え? 彼女は実は僕の憧れの人気漫画家で、マンガみたいなトラブルを巻き起こす“マンガの神様”に憑かれてるだって!?
確かに彼女はマンガみたいな美少女だし、僕は人生初のスランプに陥るし、転校生が初恋の女の子で隣の席になるし。ま、まさかこれが、“マンガの神様”の力……!! だけど僕はそんなもの、絶対に認めてなんかやらない。そして楪葉、必ず君のマンガを超えてみせる!!!
マンガの神様によって巻き起こる、トラブルいっぱい青春ライフ! 第21回電撃小説大賞〈銀賞〉受賞作。


前と後ろでこれだけ印象の違う作品も珍しい。
はっきり言ってしまうと、前の2/3は全く面白くない。
あらすじと導入部から、「マンガの神様」を使ってマンガのお約束を面白おかしく料理して、天狗になっている自称天才主人公を弄り倒していくコメディだと思ったのだけど、、、全然料理出来ていない。
“お約束”な奇抜な出来事が起こっても発展性はなく、青春・恋に走るのかと思ったら肩透かし。天才主人公は地味にスランプに陥り、しまいにはそのお約束すら起こらなくなっていく。
何がしたいんだ?と首を捻りながら読み進めると、ヒロインが漫研に入って主人公とまともに絡み始めたら急にエンジンがかかった。
ヒロインが語るマンガ論、創作論がとても興味深い内容で、そこで初めて一気に話に引き込まれる。すると、それに呼応するように、主人公の熱い内面が出て来て物語がやっと動き出す。
ラストはライバルであるヒロインにありったけの情熱をぶつける熱い長台詞に、ほとばしる青春が感じられて、読後感は素晴らしい。……そう、動き出したと思ったらラストになってしまう。
「終わり良ければ全て良し」と言いたいところだが、流石に面白い部分が少なすぎだ。