いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? #03」枯野瑛(角川スニーカー文庫)

終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (3) (角川スニーカー文庫)
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (3) (角川スニーカー文庫)

おかえりの声を、聞きたかった。ただいまを、きちんと、言いたかった。バターケーキを、食べたかった。それらの願いは、すべて叶った。帰るべき場所へ帰り、逢いたかった人に逢えた。だから。約束は尽きて。追いついてきた終末は、背後から静かに、少女の肩に手をかける。
「ごめん。わたし、もう、絶対に、幸せになんてなれないんだ、だって、気づいちゃったから。わたし、とっくに――」
青年教官と少女妖精の、儚く輝いた日々。第3幕。

祝 三巻刊行!



奇跡の生還を果たしたクトリを待っていたのは、静かな喪失でした。
ああ……。行き付く先が分かっていても、これは辛い。
一体我々は何度クトリを失えばいいのか。
前回の準備を含めた戦いの中で壊れていくクトリを読むのも辛かった。でも、今回の幸せな平穏の中で少しずつ「クトリ」が零れ落ちていく様子はさらに胸に来た。きつい。
しかも前回の大逆転エンドとは逆に、今回はラストが急転直下。別れに向けて身構えていたところの上を行かれた。分かっていても涙を誘う話の作りが見事だと感じるのと、ここまでしなくてもと思う気持ちが半々くらい。
それでも最後にノフトの一言が読者の遣る瀬無い想いを代弁してくれたから、ほんの少しだけ救われた。
今回もダイレクトに胸を打つ話でとても良かった。1巻のラストに呼応している(多分)エピローグで、ヴィレムが傷つき読者が泣く要素が増えてしまった気がするが、果たしてどうなる。
……ここで打ちきりなんて殺生なことは本当にやめてくださいね。