いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「バケモノの子」細田守(角川文庫)

バケモノの子 (角川文庫)
バケモノの子 (角川文庫)

この世界には、人間の世界とは別に、もう1つの世界がある。バケモノの世界だ。ある日、ひとりぼっちの少年がバケモノ界【渋天街】に迷い込み、バケモノ・熊徹の弟子となって、九太という名前を授けられる。奇妙な師弟関係の2人はことあるごとにぶつかり合う。だが、修行と冒険の日々を重ねるうち、次第に絆が芽生え、ともに成長する。まるで本当の親子のように――。
細田守監督が書き下ろす原作小説!

映画未視聴。


しょっちゅう喧嘩をしながら師匠と弟子として、親と子として二人で一緒に育っていく熊徹と九太の物語。
親が子を育て、子が親を育てる家族愛。これはまた随分とストレートな“いい話”を持ってきたなという印象。先が簡単に読める王道展開でありながら、それでも物語に引き込む世界作りの上手さと、それでも泣かせる台詞回しは流石の一言。
それと、大切な家族の死によって残された人の生き様。人間の醜さと尊さ。当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、前作「おおかみこどもの雨と雪」と根底に流れるテーマは一緒のようだ。
ただ、小説版でいうと残念なところも一緒。
会話劇が入るところ以外はスピーディーで実に淡泊に話が進んでいくので、どこか素っ気なさを感じるのも「おおかみこどもの雨と雪」と同じ。
また、主人公が育つ過程が7〜8年ぽっかり抜けていたり、学力が小学生低学年の就学レベルから数ページで大検に挑戦できるレベルまで上がっていたり、とんでもないことがサラッと書かれているのに面食らう。映画で魅せたいシーン以外はそんなものなのかな。
各シーンでのキャラの表情や周りの情景や使われている音楽がわからない分、小説では心理描写が欲しいのだけど……まあ、映画を見ろってことですね。