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「宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た!」松屋大好(電撃文庫)

宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)
宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (電撃文庫)

四之村を知っている人は少ない。ネットで検索をしても、まずヒットしない。まるで意図的に隠ぺいされているように。ぼくが母の都合でこの村に引っ越してきて、初めてその理由がわかった気がする。あまりにも独特なのだ。現代科学から百年は進んでいる数学理論が、高校の中間テストに出るのだから。
探偵部の部長ハコさんは言う。この村の人間は宇宙人なのよ、と。この美人な先輩が言うことが、あながち笑えないと気づいたときにはすでに遅い。ぼくはいやおうなくこの村のすごさを思い知るのだった。超古代ミステリからオカルトまで、なんでもござれの村へようこそ!

第21回電撃小説大賞 編集部選考会で議論を呼んだ怪作が登場!by帯



何とも形容し難い。怪作と言えば怪作かな。怪の部分は舞台(設定)だけのような気もするけど。
ジャンルはオカルト7割、青春2割、ホラー1割といったところ。タイトルに探偵部とあるように毎話、事件が起こって探偵としてそれに関わる形で話が進む。
しかし、舞台の四之村というのがとんでもない天外魔境。例えるなら田舎の悪しき風習を煮詰めて、その中に近未来科学をぶち込んだような村落。
おかげで前提が滅茶苦茶なのでミステリとしての楽しみはなく、主人公は状況に翻弄されるばかりで冒険を楽しむ感じでもない。また、恐らくわざとなのだろうが、どの事件も少し謎が残るようしてあってスッキリ終わってくれないので、疑問とモヤモヤが残る。なので読後感もイマイチ。
読んでいるうちは楽しみを見出せなかったのだけど、これはトンデモ世界観を魅せる作品だったのかな。主人公と共に事件を追いながら四之村の出鱈目さを感じて驚く。が正しい楽しみ方なのかも。個人的にはこの世界観なら猟奇ホラーの方向に走った方が良かった気はする。なまじ表面がカジュアルで爽やかな分、村の持つ特異性と狂気が薄くなって損しているような。
そんなわけで、あまりピンとくる作品ではなかった。