いつも月夜に本と酒

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「ハイカラ工房来客簿2 神崎時宗と巡るご縁」つるみ犬丸(メディアワークス文庫)

ハイカラ工房来客簿 (2) 神崎時宗と巡るご縁 (メディアワークス文庫)
ハイカラ工房来客簿 (2) 神崎時宗と巡るご縁 (メディアワークス文庫)

魔法のような技術で、革にまつわる面倒事を解決してくれる、噂の革工房『ハイカラ工房』。工房を切り盛りする店主は、目つきは悪いが腕は確かな若き革職人・神崎時宗。今日も作業台でにらめっこ中。どうやらひと筋縄ではいかない依頼が舞い込んだようで。
威厳無しの七光り軍人に貫禄を持たせる革ベルト、学校嫌いの少年の心まで直すランドセル、戦地の夫に想いを届けるトンビのコート、おまけに時宗に弟子が出来て。
そして、時宗に待ちに待った瞬間が訪れ――。

大正時代にタイムスリップした革小物の職人の物語、第二弾。
知人の結婚話に始まり、女性の弟子、そして病気と、話を時宗と椛の関係の方向に思い切って舵を切ってきたなという印象。
そんな訳で今回の感想は、椛可愛い。これに尽きる。
分からないのは当人のみ、時宗の言葉一つで激しく浮き沈みする椛に自然と顔がほころぶ。早い段階から病気に影がチラつく中、それでも幸せそうな彼女を様子を読むのが楽しい。
それと時宗の鈍感を分かってくれる同年代の女性、新弟子・小梅の存在が大きかった。分かった上でいい塩梅で二人の関係を弄ったり、喧嘩したら仲直りさせるように仕向けたり。いいお姉さんだった。
ただ、恋愛話は大好物なので嬉しい反面、職人の心意気を感じるところが少なくなってしまったのが残念。
革製品に込めた想いで人の心を救う話なのは前回と変わらずなのだけど、素材の説明=薀蓄小説としての面白さは残っているものの、その品に対するこだわりの描写は減ってしまった。
と、若干物足りないところはあったが、甘味は十分で幸せを感じられるエピローグだったので概ね満足。
ここまで来たら二人が素直に想いを告げあうところまで行ってほしいが、前回の伏線に十分すぎるくらい説明を入れてくれるいわゆる解決編だったので、続きが出るのかがちょっと心配。