いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「まいごなぼくらの旅ごはん」マサト真希(メディアワークス文庫)

まいごなぼくらの旅ごはん (メディアワークス文庫)
まいごなぼくらの旅ごはん (メディアワークス文庫)

体を壊して失職中の颯太。大学を休学中の、食いしん坊女子ひより。
人生迷子な二人は、亡き颯太の父が遺した小さな食堂『風来軒』で出会う。
町の人たちから愛されたこの食堂を存続させるため、二人は新たなメニューを探して旅に出る。
父の最期の料理はどこに? 幻の絶品コロッケの材料は?
東京から岩手、北海道へ。二人が歩む“おいしい旅”。元気になれるフード&ロードノベル、登場!

百合根をコロッケになんて勿体無くてできない。でも食べてみたい! 規格外品なんて地元じゃなきゃ早々手に入らないよなあ、くそう。
そんなわけで、なかなかの飯テロ小説だった。
出てくる料理は旅路でのご当地グルメがメイン。料理に対する丁寧な描写の後にくる、大食い元気娘ひよりの豪快な食べっぷりが食欲をそそる。たまに食べすぎで読んでいるだけで胃もたれしそうになるところがあるのはご愛嬌。
話としては、人生にちょっと躓いた二人がひょんなことから仲良くなって、励まし合いながら次の目標を見つけていくハートフルストーリー。
大筋では間違いなくいい話なのだけど、所々で展開が唐突なのが気になる。行動に前置きが無いことが多いせいか、主人公の颯太もひよりも、考えなしの残念な子に思えるところがいくつかある。作中に沁みるいい言葉がいくつも出てくるに、その多くが軽く感じるのはそのせいだろう。旅の過程だけでなく、人との繋がりの過程も大事にしてほしかったな。
飯小説としては満足。人生を機微を感じるには今一つ。な作品だった。