いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「皿の上の聖騎士1 ―A Tale of Armour―」三浦勇雄(ノベルゼロ)

皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ‐ A Tale of Armour ‐ (NOVEL0)
皿の上の聖騎士〈パラディン〉1 ‐ A Tale of Armour ‐ (NOVEL0)

フィッシュバーン家には伝説がある。大平原“大陸の皿”を統べる大国レーヴァテインがまだ皿の中の小さな辺境国にすぎなかった頃、ご先祖様が大陸中の霊獣を訪ね歩いて防具を授かり、集まったそれらは一着の聖なる甲冑と成った。
――それが全ての始まりだった。


 
敵も味方も一本芯が通った読んでいて気持ちのいい性格のキャラクターに、日常の軽快な会話劇と主人公たちをとことんまで追い込んでいくバトルシーンの大きなギャップ。ああ、これはまさしく大好きな三浦先生の作品だ(感涙)


皿のような国土を持つ成り上がりの大国レーヴァテインを舞台にした正統派ファンタジー。その成り上がったきっかけを作った先祖が霊獣と交わした契約の“ツケ”を払わされることになった姉弟の物語。
美貌、頭脳、剣技、どこをとっても完璧超人にして超絶ブラコンの姉・アシュリー(訳あって現在蛇)と、どこをとっても平凡な弟・アイザック(普通に人間)、それと途中で仲間に加わるドラゴンの娘・イザドラ(見た目は人間の少女)の三人旅になるのだが、それぞれのキャラクター性と掛け合いが面白い。
弟が好き過ぎて「弟よ」の口調で強弱で感情を表す姉は完璧超人の看板とのギャップに苦笑。姉が大嫌いだと言いながらも姉から目が離せない弟の様子は可愛らしいというか微笑ましい。イザドラは真面目なのに人間界の常識の無さから出る突拍子の無い行動で姉弟を驚かせる。そんな三人の様子がコミカルで、ストーリーだけなら陰鬱になりそうな暗く影を落とす話を楽しく読める冒険譚にしている。
そして真骨頂のバトルシーンは1回目から壮絶。
早くも常に死と隣り合わせで手に汗握るが、もうこんなにボロボロで大丈夫なんだろうか。今回と同じ手は使わないだろうが、最後まで行ったときアイザックの身体は何割くらい残っているのか今から心配になる。
期待通りに、いや期待以上に作者らしい作品で大満足。続きがとても楽しみ。