いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「S20/戦後トウキョウ退魔録」伊藤ヒロ、峰守ひろかず(ノベルゼロ)

S20/戦後トウキョウ退魔録 (NOVEL0)
S20/戦後トウキョウ退魔録 (NOVEL0)

時は昭和20年。場所は東京亀戸で。敗戦後の混沌とした日本を生き抜く男が二人。紙芝居屋を営む不器用な男が二人。その名、茶楽呆吉郎と襟之井刀次と申します。不死の呪いに機械仕掛け。二人が掲げる看板は、『不思議問題解決承リマス』


昭和二十年代、戦後間もない日本を舞台にしたオカルト探偵冒険活劇。
まさに旧日本軍といった体のお堅い元軍人な襟之井刀次を伊藤ヒロ氏、風来坊風の茶楽呆吉郎を峰守ひろかず氏がそれぞれ担当し、一話毎に主人公が入れ替わる短編連作形式になっている。
復興の気配はまだ薄くどこか荒廃した街並みを想像させる情景描写と、損得よりも正義感や情で動く刀次と呆吉郎のコンビの男らしさに少々のハードボイルドを感じる。それでいて二人の色はしっかり出ている。伊藤氏の作品は初めて読むが、峰守氏の呆吉郎の話にはいつものノリの良さが健在で、考え方も口調も硬派な刀次の話との緩急が付いていて面白い。
また、鉄人28号黄金バットなどの当時か、その少し後に流行ったエンタメや、実在する事件を元ネタにして書かれているのが大きな特徴で、各話のラストで強引に元ネタに繋げるオチが笑いを呼ぶ。まあ主に苦笑なのだけど。事件の顛末が後味苦めになることが多いので、恐らく空気を和ませたり軽い感じを出す為にワザとやっているのだろう。
戦後のエネルギッシュで、でもどこか影を感じる重い空気を感じさせながらも、物語は適度に軽くて読みやすく、共著だからこそ出来るコントラストが上手くハマった作品。峰守氏目当てで買ったが、二人の共著だからこその面白さだった。