いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「トーキョー下町ゴールドクラッシュ!」角埜杞真(メディアワークス文庫)

トーキョー下町ゴールドクラッシュ! (メディアワークス文庫)
トーキョー下町ゴールドクラッシュ! (メディアワークス文庫)

賠償金100億円――。伝説の女トレーダー・橘立花は罠に嵌められた。身に覚えのない罪を着せられ、証券会社を解雇されたのだ。
億単位の金を稼ぐ華々しい活躍から一転。無職となった立花は、下町・人形町の商点街に偶然辿り着く。そこで出会ったのは、顔だけが取り柄のダメフリーターや、頑固な洋食店店主など、お金はなくても人情溢れる江戸っ子たち。
彼らの助けを得て、解雇の裏にある巨悪な陰謀に気づいた立花。悪人どもを叩っ斬る、復讐劇が幕を開ける!!!

第22回電撃小説大賞〈大賞〉受賞作



読みやすいし綺麗にまとまっているしで、新人賞作品としてはとても出来の良い作品だとは思うのだけど、、、なんか普通。
唐突なクビ宣告という衝撃的なスタートに、主人公はやり手のキャリアウーマンで初めから株取引の話題ががっつりの濃い内容。これは金融や株式に対してかなり専門的な切り口で攻めてくるのかと期待したら、終わってみればキャリアウーマンが探偵の真似事しただけだったという。う〜ん。
話の中心を犯人探しにしてしまったのと、殺し屋が出てきたりと演出を派手にした所為で非現実感が強く出てしまったのが、「金融」よりも「探偵」の印象が強くなった原因か。探偵ものなら他にいくらでも優れた作品があるので、それらと比べるとどうしたって見劣りする。
それとキャラクターの使い方が微妙。
豪快な女性である主人公の立花に、おバカで憎めないイケメンの一樹、人情味溢れる下町の人々。それぞれで見ると魅力的なキャラクターなのだけど、馴染んでいる感じが全然しない。
下町の温かさが失意の立花を立ち直らせるとか、逆にいきり立つ立花を冷静にさせるとかなら物語になるが、立花は初めから反撃する気満々で冷静に周りが見えている状態で、誰の助けも無くても自分で動いている。下町の人たちの言葉が時々ヒントにはなっていてもそれ以上は無くて、イマイチ存在意義が感じられない。その最たる例が一樹。必要のないところで場を和ませていただけで、居る意味が本気で分からない。すまん一樹。
……初めに悪くないと言いながらダメ出しばかりになってしまった。反省。
とりあえず言えることは、探偵ものも日常ミステリ風作品も巷に溢れ返っている今、この程度の個性では間違いなく埋もれる。