いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係」久遠侑(ファミ通文庫)

近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)
近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 (ファミ通文庫)

母と二人で暮らす家で、遠い親戚の女子、和泉里奈と同居することになった坂本健一。里奈の控えめな性格や気遣い、女子校育ちの無防備さは、他人との距離に悩む健一に、初めて思春期の性を意識させる。同じ十七歳の女子と一つ屋根の下で生活していることを友人達にも隠そうとしていた健一だが、幼い頃からの腐れ縁、森由梨子に知られてしまい、彼女との距離感にも微かな変化がもたらされることに――。多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー。

最高だ! 最高に甘酸っぱくてこそばゆい!
遠い親戚の同い年の女の子が親の長期海外出張の為、母一人子一人(父他界、兄別居)の主人公の家に居候することに、という王道中の王道のシチュエーション。今時珍しい程古めかしい設定だが、それをこんなにも丁寧に、しかも清潔感を保ちつつ情緒たっぷりに書いてもらえたら、ブラボーと言うほかない。素晴らしい。
主人公は無愛想だが内面は優しいサッカー少年の健一。愛だの恋だのにさほど興味がなかった彼が、飛びきり素直な上に女子校育ちで男子への免疫と恥じらいが薄めのヒロイン・里奈が見せる、何気ない仕草や無防備な姿に感じるドキドキと戸惑いが、実に繊細な描写で描かれている。気恥ずかしさのあまりとってしまう無意味な行動とか、気持ちがわかり過ぎて身悶えしそう。そうだよ、このもどかしさやままならない感じが恋愛小説の醍醐味なんだよ。最近は早くに答えを求める作品が多すぎる。……話が脱線した。
そこに、健一と小さい頃から一緒にサッカーをしてきた幼馴染みの由梨子を咥えた三人がメインのキャラクター。活発な由梨子が行動を起こしたところで終わっていて、今のところは里奈の心情はほとんど描かれていないので、まだ三角関係という感じにはなっていないが、この三人の恋愛模様が紡がれていくことになるだろう。
自分が読んだ中では今年一番の青春ラブストーリー。この先、三人を中心にした若者たちの関係がどう変化していくのか、とても楽しみ。