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「キミもまた、偽恋だとしても。(1)〈上〉」渡辺恒彦(オーバーラップ文庫)

キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)
キミもまた、偽恋だとしても。1〈上〉 (オーバーラップ文庫)

関東圏のとある田舎町。物欲と引き替えに、私立岩下学園に越境入学して間もなく、村上政樹は転機に直面していた。「お願いしたいことがあるんだけど駄目、かな?」何の前触れもなく、学級委員の長島薫子に頼まれたのは「偽装恋人」になって欲しいという事。薫子の家は地元では有名な旧家で、お見合いを回避するために恋人役を頼んだのだ。しかし、政樹が薫子の親に紹介されると思わぬ事実が発覚! それは村上家こそが長島家の主筋だった事。そして、瞬く間に話は「恋人」から「婚約」へと発展してしまい!? そんな二人はお互いに、一つだけ大きな秘密を抱えていた。――それは「隠れオタク」「隠れ腐女子」という秘密であった。


東京から越境入学してきた男子と地元の旧家のお嬢様が、偽りの彼氏役から本当の彼氏彼女になろうとする物語。
主人公は重度のオタクを、ヒロインは腐女子を隠しているのが話の肝で、傍から見ればどう見てもお似合いの二人が自分の趣味を隠しているばっかりになかなか仲が進展しない。そんなもどかしさを楽しむタイプの恋愛小説。
テンポのいい文章とラノベ読者層には大変分かりやすい二人の生態のおかげか、とても読みやすくサクサク進む。反面、二人の心理描写が説明的かつ直接的な面があるため、恋愛小説としては少々情緒が足りない。主人公やヒロインと一緒にドキドキするというよりは、他人の恋路を微笑ましく眺めている心境になった。
そんな訳で今のところ、恋愛小説としてのツボは抑えているけど、全体の印象はやや淡泊といったところ。
この先は、お互いのオタバレがどのタイミングでどんなシチュエーションでされるかが一番のハイライトになるだろう。
でも(1)〈上〉という事は最低あと2冊、普通に考えたらそれ以上続くんだよね。そんなに話を広げる余地あるのかな?
とりあえず(1)〈下〉は買おうと思う。