いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「血と霧1」多崎礼(ハヤカワ文庫JA)

血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)
血と霧1 常闇の王子 (ハヤカワ文庫JA)

血の価値を決める三属性――明度、彩度、色相――による階級制度に支配された巻き貝状の都市国家ライコス。その最下層にある唯一の酒場『霧笛』で血液専門の探索業を営むロイスのもとに、少年ルークの捜索依頼が持ち込まれた。だが両親だと偽る男女は、事件の核心部分を語ろうとしない。価値ある血を持つと思われる少年に自らの過去の因縁を重ねたロイスは調査を始めるが、それは国家を揺るがす陰謀の序章に過ぎなかった。


多崎さんの新作がハヤカワ文庫JAから。
ということは今度はSFかと思ったら、地表から地中に向かって伸びる巻き貝状の都市、蒸気炉が主要エネルギー、貴族社会(作中では尊族)、血が魔法の様に色々な効果を表す等、ファンタジー色の強い世界観だった。霧煙る街並みと紫煙と硝煙の香りがする主人公・ロイスのキャラクターが相まってハードボイルド風。
序盤は血の存在がややこしいのと、都市の構造がイマイチ頭に入ってこなくて少し戸惑ったが、その内に気にならなくなって気づいたら読み終わっていた。この引き込み力は流石多崎作品。
ロイスはいわゆる探偵業で、何かを依頼されてそれを解決しながら話が進んでいくが、第一話が迷子の王子探しが地下組織の国家転覆計画に繋がったように、第二話第三話と依頼を追うと話のスケールが次第に大きくなっていくのが特徴。次に何が起こるか分からない展開というのは実にワクワクする。
ロイスの娘の存在を筆頭に色々な謎と、今後起こりそうなことの火種をこれでもかとばら撒いていったので、これらがどう発展していくか、そしてどう繋がっていくのか楽しみ。


しかし、帯裏にある2巻のサブタイトルとあらすじが不穏だ。ロイス死ぬのか?