いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま!16」和ヶ原聡司(電撃文庫)

はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)
はたらく魔王さま! (16) (電撃文庫)

『大魔王サタンの遺産』捜索のため、六畳一間の魔王城からは生活用品一式がエンテ・イスラへと移されていた。ゲートを使い、片道40分かけて通勤するのが難しい魔王は、からっぽの魔王城で独り身の生活に寂しさを感じながらも、正社員登用研修に参加していた。その研修で一緒になったゆるふわ女子に思いがけず義理チョコを貰った魔王。すると、アシエスにより情報が知れ渡り、女性陣に動揺が広がるのだった!
一方エンテ・イスラでは、大魔王の遺産の一つ『アドラメレキヌスの魔槍』を手に入れるため、鈴乃たちが北大陸に旅立っていた。そしてここでも、天使ライラに関わる因縁が発覚して……?


超高校級女子高生、ついに一国の長候補になるの巻。
前回の流れから、月に居る糞天使共を一発ぶん殴る為に魔王城=宇宙船を飛ばすのに必要な四つのアイテムを回収するのメインかと思いきや、内二つがサクッと見つかって、一つは場所が分かっている状態。これは準備をさっさと終わらせて、今回はバレンタインデーがメインのラブコメ回になるんだ。ファンタジーが濃い展開になることを予想してたからちょっと意外。でも庶民派魔王さまらしい。アシエスは鬱陶しい。……なんて思いながら読んでいたら話は思いもよらぬ方向へ。
千穂本人が切望していた、魔王軍の悪魔大元帥として魔王の役に立つ瞬間がここで来るとは。前からずっとメンバー全員の精神的支柱なのは間違いないけれど、本人に自覚がないからねえ。それにファンタジー色が強くなると、日本の女子高生は出番が少なくなるんじゃないかという懸念もあっさり一掃していった。やっぱりちーちゃんは格が違った。
結果だけ見れば、現代の弓道の技術で無双する流行りの異世界転生ファンタジーによくある展開だけど、過程も魅せるところもまるで違うのがこのシリーズらしいところ。
見ず知らぬ土地の初めての大会でも自分を保つ精神力。屈強な男の中に入っても物怖じしない度胸。老獪で狡猾な国長の婆様を唸らせる、覚悟・胆力・筋の通ったものの考え方。佐々木千穂と言う人物の器の大きさをこれでもかと見せつける話だった。清々しいだけじゃない、こんなに胸が熱くなる無双は初めてだ。
ちーちゃんの活躍が読めて大大満足な巻だった。
次回、天使の反撃が始まる?