いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「6 シックス」早見和真(集英社文庫)

6 シックス (集英社文庫)
6 シックス (集英社文庫)

東京六大学野球。野球が何よりも好きで、一心に打ち込んできた学生たちの最後の舞台。
東大の補欠、法大のマネージャー、明大の就活生、立大のミスコン女子大生、慶應野球部の保護者、そして早大のエースピッチャー……東京六大学野球を主題に友情、恋愛、コンプレックスなどを描いた珠玉の野球&青春小説。 全国の書店員さんを中心に「読むほどに人生が愛おしくなる」と感動の声が広がっています。 現役の六大学の学生からOB、そして全然関係ない方まで。感涙必至。この機会に、ぜひご一読ください。

東京六大学野球を題材にした連作短編集。
どの話も早稲田のエースでスーパースター・星隼人を物語の中心に置き、彼に因縁のある他校の選手、または彼に感化された野球選手以外の学生を主人公にした短編で、1大学1主人公の全6話の構成になっている。また、各話の終わりに開催中の秋リーグの星取表と新聞記事が付いているて、ここが意外にもツッコミどころ笑いどころ。


全体的な感想としては、
野球小説として読み始めたというのもあるのかもしれないが、野球選手が主人公の話は面白く、そうでないと微妙というのが率直な感想。また、涙腺が弱い登場人物が多く(主に親達)、貰い泣きで涙腺を刺激する話が多いのも特長。
全部野球の話が良かったなと思うところもあるけど、一般受けしやすい高校野球(甲子園)ではなく六大学野球というテーマの希少性もあって、興味深く楽しく読めた一冊。




以下各話毎




第1週 赤門のおちこぼれ
内容:最後の秋にかける東大四年生の補欠投手の話。
影の努力が報われるとてもスポ根らしい話。奇をてらわないストーリーで個人的にはこの話が一番好き。
左アンダーで147キロでコントロール良しなんて、確実にドラフト候補だね。純粋な戦力としての期待度は怪我持ちの星よりも高そう。




第2週 苦き日の誇り
内容:怪我で選手を諦めざるを得なかった法大野球部マネージャーの話。
大学生となると任される仕事が高校野球のマネージャーとはかけ離れていることに、驚きの連続となる一話。
最後の新聞記事の議員で笑った。なんて綺麗でスッキリするオチなんだ。




第3週 もう俺、前へ!
内容:就活に疲れた明大生の話。
自己PRとか志望理由って何言っていいか分からないよなーと、当時を思い出しながら読んだ。マニュアル本の存在が余計に自分の言葉を書けなく/言えなくなるのはよく分かる。
最後は容赦のない試合結果に苦笑。
就活でハートフルボッコにされた後にたまたま見に行った野球で母校がフルボッコにされるとか。ガチで凹みそう。




第4週 セントポールズ・シンデレラ
内容:目立たなくて地味なタイプの立教の女子大生がミスコンに出る話。
彼女が最後ギリギリまで出る気はないってのもあるが、友人のしつこい勧誘に辟易。
それに星くんとの出会いが彼女を変えたという話の流れは分かるが、二人の交流の描写が薄くて何がきっかけになったのかよく分からないので、ラストがしっくりこない。
おまけに新聞記事も不快。やっぱ芸能系のマスコミってクズ中のクズだわ。




第5週 陸の王者は、私の王者
内容:自分の人生に疑問を持つ慶大卒の主婦の話
これは教育ママだった主婦の母が悪いのか、彼女自身が悪いのか、時代が悪いのか……。
この手の話は実感も共感も出来ないからちょっと苦手だ。
だからオチw この新聞記事(=現実)の容赦のなさといったら。主人公は泣きながら笑ったんだろうな。




第6週 都の西北で見上げた空は
内容:早大のスパースター・星隼人がマウンド上で笑わない理由とは
亡くなった親友の為にマウンドへ。ベタだけど美しい。こういうのが読みたかった。しかも星くんが泣きまくってくれるもんだから貰い泣きまである。
でもこの話、読み終わるといくつか不安が残る。彼はこの先“自分の為”に野球が出来るのだろうか(モチベーション的な意味で)。第4週で付き合ってるはずなのに明子のアの字も出てこないという事は、彼女とは上手くいかないのだろうか。