いつも月夜に本と酒

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「響け!ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ後編」武田綾乃(宝島社文庫)

響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編 (宝島社文庫)
響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編 (宝島社文庫)

全日本マーチングコンテストに向けて、過酷な特訓を重ねる立華高校吹奏楽部の部員たち。1年生ながらAメンバーに選ばれた梓も日々練習に励むが、梓に相談もなくカラーガードを志望したあみかとのあいだにはしこりを残したままだった。梓の胸に蘇る、中学時代のトラウマ。そんななか、マーチングコンテストを目の前にして思わぬアクシデントが起こり……。アニメ化話題作に新シリーズ登場!

出来ない子に過保護なくらい優しいのに一度離れたら素っ気なくなる、傍目には優等生が自分の自尊心を満たす為だけの行為にか見えない梓の行動(しかも本人無自覚)。梓の性格の問題がついに表面化し、その性格のルーツが語られる立華編後編。
今回は何故か大人目線で読んでしまったので切なくなるシーン目白押しだった(何故かも何もおっさんだからだろ)。梓と同じ目線で読んだらみんなの注意を何で理解できないのか分からないから、きっとストレスが溜まったんだろうな。
作中で音楽の才能がない人はどこが悪いのか理解できないからイラつくみたいな厳しいことを言っていたが、梓の場合は相手の気持ちを感じる才能がない人かな。
その理由が話が進むにつれ、片親だから忙しいお母さんに迷惑が掛からないように「いい子でいなくちゃ」という想いが肥大化した結果というのが見えて来て、梓が精神的に追い込まれていくのと同じように読んでいる方の胸も締めつけられていく。吹奏楽を始めた理由が最たる例だった。小学生時代の母想いのいい子エピソードなのに無性に悲しくなる。
一方で、マーチングコンテストへの道の方は熱血スポ根そのもの。厳しい練習に厳しい先輩。たえまぬ努力とそれに感化される仲間たち。才能ある下級生への嫉妬も影を潜め、と言うより嫉妬している余裕すらないような圧倒的な練習量を見せつけてくる。その所為なのか、もしくは大人目線で読んでいた為か、関西大会も全国大会も感動よりも安堵感が強かった。
本編同様に何度も泣かせてくるストーリーで、割と重めの話なのに物語に引き込む力がある。寝る前にちょっとだけのつもりがついつい読み終えてしまった。面白かった。