いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ディエゴの巨神」和ヶ原聡司(電撃文庫)

ディエゴの巨神 (電撃文庫)
ディエゴの巨神 (電撃文庫)

新大陸の発見に沸き立つ変革の時代。海洋国家スピネイア王国に住む青年ディエゴは、違法とされる陰陽術の研究を進めていた。そのことで彼は力の出所を疑う謎の娘に襲われ、さらには神聖教会にも目を付けられてしまう。打つ手のないディエゴは、腐れ縁の友人アルバロと共に、新大陸遠征軍の船に乗り込む。
黄金の大樹がそびえ立ち、巨神が森を守る新大陸。そこで二人を待ち受けていたのは、水の檻に囚われた少女レラだった。だがレラの目覚めと共に、スピネイアで襲撃してきた娘ローゼンが森の巨神“タンカムイ”を駆り現れ――?

良質な王道ファンタジー
大航海時代をベースにした世界観は、原住民への侵略に近隣諸国や教会への軋轢などをシビアに表現されていて、そこからドラマを生み、陰陽術・万象法という大系や土地との結び付きまでちゃんと考えられた魔法が、そのドラマに彩りを与える。土台がしっかりしたファンタジーはそれだけで読んでいてワクワクする。
それに物語の軸が一貫して成長譚だったのが良かった。
小さなころの綺麗な思い出と綺麗事の理想論で突っ走る主人公・ディエゴと、卑怯で狡猾だが大勢が見えている大人たちの対比が、理想と現実の大きな溝を浮き彫りにする。その中で厳しく理不尽な現実を何度も突きつけられながら、折れることなく成長していくディエゴの姿、それに感化され味方になっていく原住民の共闘に熱くならないわけがない。
全てが上手くいったわけではない=ご都合主義でない結末も物語に合っていていい塩梅。一時の平和と、これからの苦労と希望ある未来が見えた。
ただ、そのラストにあった取って付けたラブコメ要素は要らなかったかなと。突然ツンデレ化するローゼンへの違和感が半端ない。最後にそこだけモヤッとしたのだけが残念。
それでもロマンたっぷりな終始ワクワクさせられる作品で、とても面白かった。