いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「あしたはひとりにしてくれ」竹宮ゆゆこ(文春文庫)

あしたはひとりにしてくれ (文春文庫)
あしたはひとりにしてくれ (文春文庫)

高校生の月岡瑛人は、進学校で学ぶ優等生で家族(居候含む)思い。友達とも仲良くやっているが、秘めた衝動をもっていた。その衝動を受け止めるサンドバッグになっていたくまのぬいぐるみを失った瑛人が半狂乱で探した末、かわりに出会ったのは半死状態の美女!?
「孤独をこじらせた少年」は、居場所を見つけられるのか――。

両親に息子(養子)に娘(実子)に居候二人の構成も変なら人も変な一家の「雨降って地固まる」的な家族愛の物語。土砂降りにもほどがあったけど。
最後まで読めば納得もするしスッキリもするのだが、道中は鬱屈としていてどこか猟奇的。これまでも若者の形容し難い葛藤、明確な理由のない鬱憤や抑えきれない衝動などの、若者特有の不安定さを表現して青春を感じさせてくる作風の作者だが、その中でも今回の表現方法は強烈。というより暴力的だった。それでもゆゆこ節特有のテンポの良さと登場人物たちのノリの良さでスラスラ読めてしまう。
溜まった鬱憤は主人公・瑛人のように一度思いっきりぶちまけてしまった方が自分にとっても周りにとっても本当は良い事だろう。ただ現実では事後が相当上手くいかないと人間関係が壊れてしまうので出来ないが。それを、ヤンキー漫画的な関係修復方法を含めて、現実には出来ないことを代わりにやってくれたのがこの作品。そんな気がした。だからこそのこのスッキリ感なのだろう。
パワフルで愛に溢れた作品だった。しかしこのエピローグ、今後の瑛人の学力が心配だw