いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。」友麻碧(富士見L文庫)

かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 (富士見L文庫)
かくりよの宿飯 五 あやかしお宿に美味い肴あります。 (富士見L文庫)

“隠世”の老舗宿「天神屋」で食事処を切り盛りする女子大生の葵。
銀次とともに、南の地のライバル宿「折尾屋」に攫われた彼女だが、持ち前の負けん気と料理の腕で、逞しく居場所を作っていた。
銀次と乱丸の行く末を心配する磯姫の想いを継ぎ、「海宝の肴」の担当を買って出た葵。早速献立の考案や食材集めに奮闘する彼女と銀次の元に、「天神屋」から思わぬ助っ人(?)がやってきた!
懐かしくも頼もしい仲間に励まされ、準備も順調に進んでいたのだが、呪われし南の地には、それを快く思わない存在がいて……。


とにかくずっと何か料理を作っていた気がするこの5巻。文句なしで過去最高の品数だった。必然的に飯テロ力も過去最高。
肉汁をしたたらせながら豚肉の塊を燻しているところからスタートというオープニングから強烈な一撃。なんて胃袋に優しくないんだw その後も出るわ出るわ、旨そうな料理に数々。しかも今回は儀式の肝である秘酒にあう酒の肴がメインという事で、しょっぱい系で香りの強い料理かつ味付けが分かりやすい=味が想像しやすい料理ばかりだったので、腹が減ることこの上ない。それに葵の料理は和食と洋食がごった返している感じが、家庭料理っぽくてまた良い。そういえばあまり中華系の味付けは出てこないな。作者の好みかな。
おかげで本来ならメインのはずだった儀式がおまけ、というより儀式が葵が飯を作るための理由に、目的と手段が入れ替わってしまっていた気がしないでもない。話の軸が絶対に失敗できない儀式の本番で、それを妨害してくる妖怪にその妖怪の罠にはまった葵と、事実を並べると緊張感があるはずなのに、シリアスになりかけるとすぐ料理に上書きされてしまうから緊張感が霧散してしまう。
物語としてはこんなに軽くていいのか?と思うところもあるけれど、一番の目的である葵の料理が数多く出てきたので満足。美味しい一冊だった。