いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「くりかえす桜の下で君と」周防ツカサ (メディアワークス文庫)

くりかえす桜の下で君と (メディアワークス文庫)
くりかえす桜の下で君と (メディアワークス文庫)

高校1年の少年、望月譲はある日、自分がいつの間にか入学式の日に《戻っている》ことに気がついた。彼は同じ境遇の生徒会長から、驚愕の事実を聞かされる。
『学校の一定人数が、入学式から桜が散るまでの《くりかえす時間》の中にいること』
『出ていく方法は、《ループ》の中で誰かと恋人になること』
《ループ》の外に好きな人がいた譲は、彼女がこの世界に訪れるのを待つことにするが、同時に《ループ》内に3年以上留まっているという、ある少女のことも気になり始め――?

(一応)大人向けレーベルならば『インサイド・ワールド』の頃の周防ツカサ作品に出会えるんじゃないとちょっとだけ期待したんだが、まあないよね。もう10年以上前だもんね。イメージカラーは灰色なのに青春感がある独特の雰囲気が好きだったなあ(←未練がましい


という個人的で一方的な願望は置いといて、
本作は表紙もタイトルも桜色なら作中の雰囲気も桜色。王道ベタ甘ラブストーリー。
タイムリープものではあるが、SF的な考察を極力抑え、ループによるメリット・デメリットの表現もかなり控えめして、ループの設定を恋愛に特化させたような作品。ループにはまって絶望する者もいなければ、ループを悪用するような輩も人の恋路を意味なく邪魔する様な輩も出てこないので、ひたすら恋愛模様に集中できるのが良いところ。それと主人公とヒロインの趣味や関係性が、読書好きな人なら間違いなく好感が持てる点もポイントが高い。
また、語りすぎない簡素な文章が良い余韻と妄想の余地がある行間を生んでいる。告白のシーンの淡い感じがかなり好き。
SF好きはもちろん綺麗事ばかりの人間ドラマを受け付けない人には薦められないが、甘いもの好きな人には安心して薦められる一冊。