いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。」逢上央士(宝島社文庫)

建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 (宝島社文庫)
建築士・音無薫子の設計ノート あなたの人生、リノベーションします。 (宝島社文庫)

産後クライシス(?)で妻子に出て行かれた男性、サモエドと暮らす老夫婦、自宅カフェ開業を考える二人の主婦……
音無建築事務所には、今日もさまざまなワケありクライアントが訪れる。天才的な観察眼を持つ音無薫子(おとなし・かおるこ)は、彼ら自身も気付いていない真の問題に、建築士として切り込んでいく。「あなたに必要なのはリフォームではなく、リノベーションです」。
個性的な面々が織りなす、大人気“建築" ミステリー、第2弾!

おや? 前とは趣きが違うな。
主人公のチュンこと今西くんは大学生のままだけど、話の焦点が完全に仕事の話にシフトしていた。1巻では時折入った建築学部の話に「あるある」「わかるわかる」ってなるところが個人的に一番ツボなポイントだったのだが。まあ、そんな極々一部にしか刺さらないニッチな需要は無視するとしても、学生要素は本当に薄くなった。1巻は彼女と別れ、務めていたインターンを逃げるように辞めてきた今西が、なくした自信を取り戻したり人として成長したりするのがメインだったのに、今回はそれを感じられるところが少ないのが残念。テキパキ動くチュンに頼もしさを感じる反面、言葉は悪いがモブ化したなと。
それでも薫子のリノベーションを通じて、人との住む家の関わり方や人の機微を感じる話として十分に面白い。
前の二話(全四話)では、様々な事情で精神的な視野狭窄に陥っている依頼者たちに、リノベーションによって周りを見る余裕を作っていくところが良い。特に一話目の薫子の豪快な手法が気持ちいい。
また、後半の二話では仕事は一人では出来ないという事、様々な業種の沢山の人たちが関わって一つのものを作り上げる大切さが説かれている。どんな仕事でも当たり前のことながら、それが目で見て分かりやすい建築という仕事で表すことで説得力が生まれている。様な気がするのは似たような業種だからかもしれないが(^^;
続きはあるのかな。元カノとの関係を含めてまた今西にスポットが当たるといいのだけど。