いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「漂海のレクキール」秋目人(ガガガ文庫)

漂海のレクキール (ガガガ文庫)
漂海のレクキール (ガガガ文庫)

聖王家が治める唯一の陸地・リエスを除くほとんどが水没してしまった世界。リエスを追われた人々は『船団国家』を形成し、大海原での生活を続けていた。ある日の不法船集会で、『不沈』の異名を持つ船乗り・カーシュが出会ったのは、リエスで起きた政変を命からがら逃げのびた聖王家の末姫・サリューだった。場違いな様子のサリューを気にかけたカーシュは、彼女からある取引を持ちかけられることになる。「わたしを、この海図が示す場所に連れていって」。――自由を求め、海を漂い、最果てに想いを馳せる海洋戦記ファンタジー出航!

秋目人×ファンタジー×海で勝手に期待していたものがほぼそのまま出てきた。とても面白かった。控えめに言っても大好き。
陸地のほとんどが海中に沈んだ世界で船を駆る男たちの物語で、沈んだ遺跡からはオーバーテクノロジーな遺物が見つかる世界観。唯一の陸地を持つ王家の他に海上の船団国家が睨みあう緊迫感のある世の中で、主人公が助けるのは元王女の少女。そして最終的に目指す先はまだ見ぬ大地。
ファンタジーとして目新しい要素はないが、これだけロマン溢れる要素をふんだんに取り入れられて、それを力のある作家さんが書ききってくれたら、これほど面白いものはないわけで。
でも、多分あんまり売れないんだろうなあ(^^;
卒がない構成と落ち着いた文章、キャラクターに過度なキャラ付けや装飾をしないのが作者の長所で、だからこそ好きなのだけど、ラノベらしいかと言われるとノー、ラノベらしいラノベが好きな人には地味に感じるだろう。二人いる十代の女性の華やかさより男臭さの方が勝ってるもんなあ。とぼけた感じなのにやる時はやる男な主人公も良かったが、表面は気の良いおっさんで内面は強かなトビアス船長がお気に入り。
それでも流行りなんて気にしないガガガ文庫なら続刊を出してくれると信じている。序章が語る歴史まで連れていってくれ。