二足歩行兵器――機巧外骨格。先の戦争を通して性能を存分に示したその兵器運用の舞台裏では、決して消し去ることのできない遺恨が生まれていた。その確執の火薬庫は、搭乗者育成学校を襲うテロとなって爆発する。整備士として学園を訪れていた黒宮凛児。学内でトップクラスの操縦技術を持つ花枝連理。運命的な因果に絡め取られた二人の手に、生徒たちの命運が託される。戦争という悲劇が生んだ、機巧外骨格の名誉と汚名。その真相を受け容れる時、凛児は再び希望の光を掴みとる。
第11回小学館ライトノベル大賞優秀賞受賞作。
表紙の無骨なロボットに惹かれて購入したら、中身も今の流行に真正面から逆行する骨のある内容の作品だった。ロボットアニメにダイ・ハードにヤンキー漫画のヒロイン、90年代の好きなもの全部盛り込みましたと言わんばかりの圧倒的な90年代感、素晴らしい。
話としては、ある特殊部隊の生き残りの凛児と搭乗者育成学校のエース連理が、学校を襲ったテロリストたちに、たった二人で立ち向かう緊張感のあるシリアス系のロボットアクション。戦後間もない世の中で、戦争の落とした影を生々しく描く重厚感のある世界観で、特に主人公とテロリストたちの部隊が受けた仕打ちは理不尽極まりなく、どちらが悪とも言えない単純な勧善懲悪ではないところに読み応えを感じる。
それでいてライトノベルらしさもちゃんと備わっている。
嬉々として書いてるのがわかる装備語り(主に火器類)とAIなのに変態痴女な逢瀬のユーモアがシリアスな空気の息抜きになっているのがその一つ。そして、主人公とヒロインの悲劇的で運命的な出会いに始まり、ヒロインの言葉でトラウマを克服する主人公や、育ての親して最強の敵との対決など、この手の話のお約束を奇をてらわず真っ直ぐ書かれているのが、驚きはないが盛り上がるシーンに気持ちを持って行きやすいので、読んでいて気持ちいい。
新人賞らしからぬ古めかしさと堅実さが光った作品で面白かった。この時代にこんなものが読めるだなんて。流石はガガガ文庫さん。