いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業」筏田かつら(宝島社文庫)

君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)
君に恋をするなんて、ありえないはずだった そして、卒業 (宝島社文庫)

普通に過ごしていれば、接点なんてなかったはずの飯島靖貴と北岡恵麻。徐々に仲良くなり、「好き」という気持ちも芽生え始めていたところで、恵麻が友達に放った陰口を靖貴は耳にしてしまう。すれ違ったまま向かえた一月、大学受験を控えた靖貴は「遠くの大学を受ける」という選択肢を考え始めて……。不器用すぎる二人の恋は、どう卒業を向かえるのか。
二人のその後を描く「春休み編」も収録。

クラス内カーストの底辺の男子・靖貴と上位の女子・恵麻よる青春恋愛小説、下巻。
恵麻のタイミングの悪い失言直後から始まる後編は、、、へヴィだ。恵麻ちゃんずっと泣いてたな……。
上巻でも恋愛小説なのに惹かれ合う二人がなかなか交わらないもどかしさが特徴だったけど、下巻はそれに輪をかけて別々。割り切って前に進もうとする靖貴と失敗を引きずりまくっている恵麻の対比が顕著で痛々しいほど。言葉を選ばずに言ってしまうなら、延々と恵麻のハートフルボッコタイムが繰り広げられていた。
空回ったり凹んだり追いつめられたりする役回りは、立場が弱い方、自分に自信がない方の役割だというイメージがあるので、リア充な恵麻が泣き続けている状況にはかなりのインパクトがあった。しかもそれを、ギリギリのタイミングまで引っ張ってくるのでヤキモキ感がもの凄い。恵麻に対しても読者に対しても作者ドSだわw
でも、こうしてとことん落としてとことん引っ張ったからこそ、成就の瞬間に幸せが爆発して、その後のイチャイチャタイムのニヤニヤが止まらなくなった訳だ。
最後靖貴が、恵麻の「なんか」にちょっと傷ついていたけど、君のいう「あんた」も結構棘のある言葉だと思うぞ。まあ要するに、そのくらいじゃびくともしないってことを見せつけられてしまった訳だ。ちくしょーお幸せに!
普通の高校生の等身大の恋模様を普通の恋愛小説とはちょっと違う形で楽しめる良作だった。