いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「海の家のぶたぶた」矢崎存美(光文社文庫)

海の家のぶたぶた (光文社文庫)
海の家のぶたぶた (光文社文庫)

町の海水浴場に、ひと夏限定、レトロな外観の海の家ができたという。かき氷が絶品で、店長は料理上手だが、普通の海の家とは様子が違っている。店先にピンクのぶたのぬいぐるみが「いる」のだとか……? そう、ここはおなじみ、ぶたぶたさんの海の家。一服すれば、子どもの頃の思い出がすうっと蘇ってきて、暑さも吹き飛びますよ。心に染み入る、五編を収録。

小学生以来、海の家があるような海水浴場に行ったことがないので海の家のイメージというと20数年前のものになるのだけど、ぶたぶたさんの海の家は昔ながら風に作ってあるようなので、イメージの修正が必要なかったのは助かった。逆に周りの今風の海の家はどうなっているかが全然想像つかないんだけどね(^^;
そんなわけで、今回のぶたぶたさんは海の家の店長。
どんな職業についてもその本の終わりと共に自然消滅してしまうぶたぶたさんにとっては、初めから終わりが確定している店をやるのは珍しいパターンかも。まあ、やることはいつもと変わらないのだけど。
良かったのは三話目と四話目。
ヒステリックなお母さん(一話目)に空気の読めない彼氏(二話目)と立て続けに微妙だったので、今回はハズレか?と思い始めたところで持ち直してくれた。一話目のお母さんは夫のメールの何にキレていたのんだろう? 読み返しても分からん。
三話目は引っ越してきた少年とぶたぶたさんの出会い。こんな印象的で楽しい出来事があったら間違いなく良い思い出になって、後々も夏の海が好きになれそう。少年が羨ましい。
四話目は家族との思い出がない男性が、昔の家族の顔を知る話。
話自体もハートフルで良いが、今回の他の話ではちょっと影の薄いぶたぶたさんがここではがっつり出てくるのと、三話目の少年が海の家に持った印象を補足する話が出て来る=前の話と繋がっているのが良いところ。
後どうしたって印象に残るのはかき氷。出てくる出てくる普通じゃないかき氷メニュー。甘いものは好まない自分でも洋風宇治金時はかなり興味ある。
食べ物と人情とでいつもと変わらないぶたぶたさんで、ホッとできる読書時間。