いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「閻魔大王のレストラン」つるみ犬丸(メディアワークス文庫)

閻魔大王のレストラン (メディアワークス文庫)
閻魔大王のレストラン (メディアワークス文庫)

――あの世とこの世の狭間にあるレストラン『紫苑』。
そこは食事に未練を残したまま、世を去る人が訪れる不思議なレストラン。
髭面のギャルソンが出迎え、コックの閻魔が奇跡の味わいで死出の旅路を彩ってくれる優しい場所。
「これより天へ昇る味わいで、あなたの別れを祝福致します」
最後の食事を、あなたはどなたと召し上がりますか?
もちろんお代はいただきません、その代わりに――。

未練を残して亡くなった人の中で、食事に関する未練を強く持った者だけが送られてくるあの世とこの世の狭間の店『紫苑』。そこはシチュエーションを含めた食事を提供し、未練をなくし成仏させる閻魔様のレストラン。
流行りの設定を上手いこと掛け合わせて独自の世界を作り出している事に感心しつつも、閻魔様たち店側の人物のキャラクターが妙に立っていて、未練を残した死者と大事な人との最後の食事に集中しきれないのが玉に瑕。
店側の人が目立ってちゃダメだろう、もっとストレートにお涙頂戴な話にすればいいのに。と思いつつ読み進めたら……なるほど。全てはラストの四章に繋がっていたのか。
全ての準備が整った四章は多くの優しさと少しの苦さが綺麗に混ざり合った沁みる話になっていた。終わりよければではないが、最後が良いので読後感もとてもいい。でも、これだけ出来るなら、その前の三章の人たちの想いも同じくらい丁寧に扱って欲しかった、という思いはある。
それでも切なさと優しさ溢れるいい話だったのは間違いない。