いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「嫌われエースの数奇な恋路」田辺ユウ(電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)
嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

五〇人である。
前年の甲子園予選で決勝戦まで残った結果、北条館高校の女子マネ志望者は爆発的に増加した。
その決勝戦敗北のA級戦犯にして今は男子マネとなった押井数奇、通称「嫌われエース」は五〇人全員を門前払いしようとするが、一人だけ残った強者がいた。
蓮尾凜。ぱっと見は深窓のお嬢さんな美少女ながら、強気で不遜で唯我独尊。そしてどうやら過去になにか因縁があるらしく、やたらと数奇に構ってくる。
そんな凜と一緒に、数奇はチームを甲子園に導くべく奮闘することになるが!?
ブコメしながら青春してます! 笑いと感動のさわやかストーリー!


最近野球小説、野球ラノベが増えて嬉しい。
但し、本作は野球ものとしてカウントしていいのか悩む代物だったけど(^^;
甲子園を目指している高校と思えない緩い練習と情熱や必死さを感じない選手たち。監督が一切出て来ない不思議。読んでも主人公がここまで嫌われる理由が全然分からない謎エピソード。ご都合主義が過ぎる医者の診断。細かいことはもっとあるが、とにかく野球部周りの描写は違和感しかない。ラブコメの舞台装置と割り切っても流石にこれは不出来。
それでもヒロイン・凜の魅力だけはピカイチ。気の強いお嬢様な第一印象から始まり、そこから色々な顔を見せてくれる。
イメージピッタリなSっ気とやや意外な茶目っ気が発揮される主人公・数奇との掛け合いの数々は、数奇のツッコミのキレも相まって、テンポのいい笑えるコメディに仕上がっている。それに学内での奇人っぷりと、ちょっとズレていて不意打ちな“デレ”ポイントで、ギャップ萌えも十分。
そして何と言っても一番の魅力は一途さ。ベタではあるが、後半二度も「可愛いじゃないか」と思わせられてしまったら、負けを認めるしかない。
舞台は滅茶苦茶だったけど「凜ちゃんが面白可愛いから、こまけーことはいいんだよ」という、ヒロインを楽しむことに特化したラブコメだった。