いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「お弁当代行屋さんの届けもの」妃川螢(富士見L文庫)

お弁当代行屋さんの届けもの (富士見L文庫)
お弁当代行屋さんの届けもの (富士見L文庫)

フレンチシェフとして活躍した石嵜眞琴が始めた“お弁当代行屋”には、ワケアリの依頼がやってくる。今度のオーダーは事故で母を失って以来、どんなお弁当も食べられなくなってしまった5歳の透のお弁当。眞琴は血のつながらない甥の陽仁とともに、依頼人の思い出からレシピを探り、味付けから盛り付けまで、お母さんのお弁当を再現するのだが……。
「お弁当を届けにいくんじゃない。想いを届けにいくの」
幼い透が望んだ、本当のこととは――? 心を温かく満たしてくれる、3編のお弁当の物語。

フランスのレストランや日本で出張料理人を経験してきた女性シェフ眞琴の現在の仕事はお弁当代行屋。持ち込まれる依頼の裏にはどれも家族の問題が絡んでいて――。それを甥・陽仁のサポートを受けながら解決していく、お弁当と一緒に人の想いも届けるハートフルストーリー。
……のはずだったんだけど、話の比重が弁当<<<甥っ子だった(^^;
眞琴、陽仁、依頼者、食べる人と視点がコロコロ変わるのが特徴なのだけど、陽仁視点と眞琴が陽仁を見ている時だけ文章のテンションが違うもの。他のところは文章が真面目で良くも悪くも感情の起伏が少ないのに(特にお弁当の説明は事務的で全然美味しそうじゃない)、陽仁が絡むと文章に感情が込もる。
その甥っ子陽仁くん。
大人になっても少年の様な心を持つ爽やかイケメンで、ウェブデザイナーで稼げて普段はフリー。人当たりと奥様受けが良くて探偵の真似事もサラッとこなす。自分に懐いていて、言う事は何でも聞いてくれる。おまけに姉の連れ子で血の繋がりがないから読者の妄想も捗る。
何だこのファンタジー世界の生き物。……と思ったところで、はたと気づいた。これ、男の子の理想を詰め込んだ男子向けのラブコメのヒロインと一緒だ。なるほど、好きな要素を詰め込んだキャラのところはウッキウキで書いてしまうのは仕方ない。
犬系イケメン男子を愛でるのがメインの話で、女性向けの作品が多い富士見L文庫の中でも完全な女性向け。残念ながら男が読んで面白いタイプの作品ではなかった。