いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師」大黒尚人(富士見ファンタジア文庫)

デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師〈リヴェンジャー〉 (ファンタジア文庫)
デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師〈リヴェンジャー〉 (ファンタジア文庫)

西方大陸最強のグラニヤ帝国〈黒天騎士団〉がひとりシオンは、母国に裏切られ家族を壊された。復讐に燃える少年は「武」に勝る「知」の力を得て、軍師アートルム卿の名を継ぎ強大な帝国に復讐を誓う! そして現在、東部のエルザイム王国は、帝国の脅威に晒されていた。抗戦か、講和か。国論は二つに割れ、王国は内乱の危機にある。抗戦派の旗印ローゼニア王女に仕える女騎士セイレンは、海辺に流れ着いたシオンを介抱する。シオンは正体を隠したまま彼女と行動を共にするのだが、この出会いが後に大陸史を塗り替える『デュシア大戦』の幕開けとなるとはまだ知る由もなかった――いま、逆襲の戦記が幕開く!!

フルメタ・アナザー』の大黒尚人による本格戦記ファンタジー



なんだろう、このもの凄くもどかしい感じ。
戦乱の世の中の劣勢の国という重めの状況ながら、堅苦しさのないカジュアルな台詞で、ラノベらしい読みやすさは保てている。中でも伯爵とその妹の爺婆コンビのファンキーさが個人的には一番のお気に入りポイント。
キャラクターも、普段はチャラそうでもやる時はやる、オンオフのはっきりとしたシオンは主人公然としたキャラだし、正統派ヒロインのセイレンに妹キャラのルル、無口幼馴染みのカナンとヒロインの質と数も十分。姫様は性格がアレでヒロインって感じじゃないがキャラとしては面白い。
戦記としての本分も、大勢の戦況を刻々と伝えながら、個の戦いも魅せていくスタイルでそつがない。
要するにラノベの戦記ものとしてのツボは押さえていると思う。……思うのだけど、なんかこう垢抜けない感じ付きまとうのは何故だろう。
源力(エーテル)というこの世界特有の異能に関しては、説明不足で持て余している感があるものの、アニメ化までした『アルデラミン』もつい最近まで妖精は「この子たち要る?」状態だったことを考えると、大した問題ではないだろう。
何かのきっかけで一気に面白くなりそうな予感はあるのに、その一押しの何かが足りない。主人公の境遇がシビアなので、話が進んでもっとシリアスに振れれば変わってくるかもしれない。