いつも月夜に本と酒

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「皇女の騎士 壊れた世界と姫君の楽園」やのゆい(ファミ通文庫)

皇女の騎士 壊れた世界と姫君の楽園 (ファミ通文庫)
皇女の騎士 壊れた世界と姫君の楽園 (ファミ通文庫)

蛮族との戦の功績により、竜王国の騎士隊長へ成り上がった竜騎士アルス。将来を期待されていた彼だったが、ある日、空から飛来した謎の巨大軍船を駆る皇国によって国を滅ぼされ、流浪の身となってしまう。すべてを失ったアルスが唯一求めるのは、祖国や友を奪った皇女ハルノミヤの首。しかしその復讐の旅の最中、敵国の娘サファイアと出会い、なぜか旅館経営を手伝うことになり――。仕える国を失ったエリート騎士の再生ファンタジー、開幕!

なんだこりゃ。ちぐはぐってレベルじゃねーぞ
王国の騎士として隣国の蛮族と戦う中世風ファンタジーのオープニングから、唐突に巨大宇宙戦艦出てくるSFになり、落ち着く先は田舎町の宿の従業員で中世風に戻り、最後は宇宙(SF)へ。
また、度を越した堅物の主人公に、天才とバカは紙一重を地で行くヒロイン、超聡明な七歳児など個性的なキャラクターを配しながら、ラブコメの気配がほとんどしない。まあラッキースケベなシチュエーションがあっても、本人がラッキーと思わなければ、コメディにはなってもラブにはならないよね。
それで結局何をやっているかと言うと、敗残の兵となっても如何なる時でも騎士たらんとする主人公が自分を見つめ直し、新たな目的を見つけるのがメインストーリー。間違いなくいい話ではあるのだが、非常に男らしい、いや男臭い物語になっている。このパーツでどうしてこうなる?
他にもタイトルがどう見てもネタバレだったり、日本でもないのに着物とメイド服が同居していたり、闇鍋感が凄い。
でもこの煩雑さ、結構好き。
荒唐無稽で無駄にスケールが大きいところとか、やっていることに統一感がないのに最終的にはいい感じにまとまっているところとか、自分が好きな川崎康宏作品や、最近だと『雨の日も神様と相撲を』(城平京)に似た空気を感じた。流石にそこまで洗練されてはいないけれど。
一応、続きの構想はあるようだけど、一見滅茶苦茶だし話は男臭いしで人気出るかは微妙だ(^^;
続いたら宇宙戦争になってしまう気もするが、こいつらなら何かやらかしくれるじゃないかと言う期待もあり、あまり期待せずにでも楽しみに次巻を待とう。七歳児の正体も気になるしね。