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「ねじ巻精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIII」宇野朴人(電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIII (電撃文庫)
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXIII (電撃文庫)

ポルミニュエとの結婚が決まり、テトジリチ家とユルグス家の間で起こった悶着に頭を抱えるマシュー。長きにわたった治療が終わり、兵として復帰するハロ。父や兄と共に、新たに心を奮い立たせるトルウェイ。准将という地位に困惑しきりのサザルーフ。独特のやり方でトリスナイ宰相との距離を縮めるヴァッキェ。帝国国民議会を開き、新たな政治を打ち立てようとする女帝シャミーユ。そして、そんな彼ら彼女らを温かく見守りながら、カトヴァーナ帝国を正しい未来へと導くために、いよいよ動き出すイクタ。
キオカ共和国との決戦を前にした静かな日々は、まもなく終わりを迎える――。

世界の秘密が明かされても、今を生きる人々の生活は変わらない。そしてもちろん決戦の機運は変わらない。帝国とキオカの決戦を目前にした束の間の日常を描く、シリーズ13巻。
決戦を前に、多くの人の素直な心境が綴られた話だった。まるでこれからぶつかる想いの形と大きさを知らしめる様に。これまでの戦争で受けた傷と後悔や、戦争への準備で募っていく不安と迷い。帝国側でもキオカ側でもネガティブな想いに囚われている人物が多かったのが印象的で、日常回と言いつつシリアスで空気の張りつめた話だった。帝国人もキオカ人も一緒に居た前回の方がまだ空気が穏やかに感じるくらい。
そんな空気になったのも、冒頭から、いやその前のあらすじの頭から盛大にやらかした奴が悪い……というのは半分冗談としても、大きな戦の前に婚約ってお前、ド直球の死亡フラグじゃないか。死ぬなよマシュー。
後は何で今更この人?って人が出て来て面食らうのだが、最後まで読んで納得。このイクタとマシューの会話を引き出したかったのだろう。沁みる話であると同時に、冒頭の旗が大きくなったような気がしないでもない(^^; 当の本人は最期だけいい人風だったけど、心情的には最期までヤな奴だったなと。遣る瀬無さとモヤモヤを残していきやがって。度を越した怠惰と無知はやっぱり罪だと思うんだ。
次巻いよいよ最終巻。主要キャラでも容赦なく斬り伏せるこのシリーズ、いったい何人が生き残るのか。