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「六道先生の原稿は順調に遅れています 二」峰守ひろかず(富士見L文庫)

六道先生の原稿は順調に遅れています 二 (富士見L文庫)
六道先生の原稿は順調に遅れています 二 (富士見L文庫)

文芸編集者の滝川詠見が担当するのは、怪奇を喰って物語を綴る、妖怪で作家の六道そう(王偏に宗)馬。
なかなか原稿の上がらない六道から、詠見が努力の末にもぎ取った久々の新作が、なんと文学賞を受賞した。ところが六道は妖怪故に受賞式には出られない。詠見が代理で壇上に立つものの、同じ受賞者で気鋭の作家・踊場漂吉に怪しまれる始末……。とはいえ先生を売り出すチャンス! と新作を求めて日参する詠見だったが、またもや怪奇事件に遭遇して……?
編集女子と妖怪作家の、怪奇×お仕事物語、第二弾。

相変わらず峰守作品の主人公は前向きで、読んでいて清々しい。
特に本作の詠見さんは、自分が正しいと思ったことをストレートに表現できる主人公なのでスカッとできる場面が多い。尚且つ相方が良いからその心地よさが何倍にもなっている。突っ走りがちな詠見の相談を、笑顔で受け止めてクールダウンさせつつ的確なアドバイスをする六道先生の人の好さが彼女の良さを引き立てる。それに、二人の立場が時々逆転して、それでも成立するのが二人の関係性の面白いところ。いいコンビだ。
一方、物語の方では、文章にしろ絵画にしろ世に出た作品が、作家の意図しないところで与える良い影響と悪い影響について語られているのが印象的。それも主に悪い影響が作家に与える影響について。
筆を折って消える人、悩む人、それでも書く人。色々な事例に触れ、自分自身も問題に直面して、悩んで出した六道先生の答えに胸を打たれた。時折詠見を眩しそうに見ているけれど、あなたも十分に前向きな人だ。あ、人じゃなくて妖怪か。
次第に仲が深まっていく詠見と六道は気になるし、意外なところで出来た仲間との絡みも気になる。次回も楽しみ。