いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「君死にたもう流星群」松山剛(MF文庫J)

君死にたもう流星群 (MF文庫J)
君死にたもう流星群 (MF文庫J)

二〇二二年十二月十一日。それは僕が決して忘れられぬ日。
その日、軌道上の全ての人工衛星が落下し、大気圏で光の粒となり消えていった。『世界一美しいテロ』と呼ばれたこの現象にはたった一人、犠牲者がいて……! 引きこもりの少女・天野河星乃を救うため、高校生の平野大地は運命に抗う。
「まさか読み終わる頃に自分が泣いているなんて考えもしませんでした」「切なさ、絶望、一縷の望みと試行錯誤の日々、さわりだけ読むはずが先が気になってもう止まりませんでした」「この作品を読んで僕も夢を諦めたくなくなりました」発売前から多くの人を感動に巻き込んだ『宇宙』と『夢』がテーマの感動巨編スタート!

……なんだこの酷いあらすじ。後半が胡散くさいったらない。表紙の集客力を100とすると、このあらすじは-50くらいじゃないか。ラノベでも絵に重きを置かないから、作者買いじゃなかったら敬遠してた。




作者が松山さんで、初めからおちゃらけ一切なしのシリアス路線。これはお涙頂戴ものだろうと読み進めると、案の定約1/3で来る一度めのピーク。
しかし、そこから先は世界が一変した。タイムスリップしたらサスペンスになるなんて。
そんなわけでこの物語は、
3年前に最愛の少女をある事故で失い人生どん底の青年が、彼女の作った意識を過去に飛ばすタイムマシンで、彼女との出会いからやり直すSFサスペンス。夢を持たず「コスパ」のみを意識して生きてきた少年が、今度こそ夢を掴む物語。
と、文字に起こすと若干チープだが、SF部分は細かいところまで考えられていて(但しその分少し説明が多い)、登場人物たちが置かれる状況はシビア(タイムスリップ前の主人公への仕打ちが残酷で戦慄)で、内容にチープさは欠片も無い。
タイムスリップで戻った8年前の世界では、主人公・大地が経験してきた現実=一周目とのズレがあちこちに点在し、また大地の行動で過去が変わっていく。という状況説明をしつつ、初めの山を越えつつの1巻らしい内容ながら、SFに先の読めない展開にとワクワクさせてくれる要素が沢山でぐいぐい引っ張られる。
未来は本当に変えられるのか? 過去を変える度に血を流す大地の身体への影響は? 沢山張られた伏線はどう繋がるのか? 今後の展開が非常に楽しみ。