いつも月夜に本と酒

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「星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き」樋口直哉(講談社文庫)

星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き (講談社文庫)
星ヶ丘高校料理部 偏差値68の目玉焼き (講談社文庫)

廃部寸前の料理部に入った篠原皐月。同級生の藤野ちゃん、謎な雰囲気の部長・内海、顧問の沢木先生。「目玉焼きが上手に焼ければ、料理なんて楽勝だ!」を合言葉に、オムレツ、ハンバーグ、焼きそば、カレー……不慣れな料理と格闘しながら、身のまわりの事件まで美味しく解決! 読み味最高のクッキング小説。

目玉焼きやハンバーグ、米の炊き方など、料理の基礎の基礎を科学的根拠を交えて懇切丁寧に教えてくれる薀蓄小説的作品。
後半に出てくるハンバーガーやローストビーフも作り方から丁寧かつ美味しそうで、巷に溢れる他の飯テロ小説とは一線を画す魅力がある。
と、料理という一点ではとても興味をそそられる話だったのだけど、その他の要素がね……。
どこに偏差値68の要素があったのか全くわからないし、身のまわりの事件まで美味しく解決!とあるのに、そもそも事件が起きていないという。戦時中のワインの樽や捨てられたパンの話をしてるのだろうか? でもあれは謎ではなく、知識を披露しただけだよなあ。
登場人物に関してもそう。
主人公(だぶん)篠原の料理の成長、その篠原を料理部に誘った藤野の恋、親と問題があるらしい内海部長の雪解け。そのどれもあったけど、どれにも深くは踏み込まない。どこにも焦点が合っていない様で、何がしたいのかよく分からなかった。
そんなわけで物語は残念だったけれど、知識欲を満たす薀蓄小説としては面白かった。