いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ピンポンラバー」谷山走太(ガガガ文庫)

ピンポンラバー (ガガガ文庫)
ピンポンラバー (ガガガ文庫)

かつて天才卓球少年と呼ばれた飛鳥翔星は、怪我のため卓球界から姿を消した。それから数年後、私立卓越学園の入学式に彼の姿があった。そこは日本全国から集まった卓球エリートたちがひしめく最高峰の学園。翔星がこの学園に進学した目的は小学生時代に唯一敗北を喫した名も知らぬ少女を見つけ出し、そして勝利することにあった。だが、入学初日にして彼は本物のエリートによる洗礼を受けることになる……。その身を焦がすほどに卓球を愛し、すべてを捧げた少年の燃えるような青春。
第12回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。

可もなく不可もなく。
大好きなスポ根小説で、大怪我した主人公の復活劇に、思い出の少女との再会というシチュエーションも大好物だったのだが、必要以上にこじんまりまとまってしまった印象が強い。残念ながら琴線に触れるもの、熱くしてくれるものは見つからなかった。
とりあえず残念だったのが試合。
スピード感が最も大事な卓球なのに、試合の描写が説明的過ぎてスピード感が感じられない。また、周りの反応がほとんど出て来ないので、盛り上がってるのか静まり返っているのかも分からず、臨場感がゼロ。スポーツにしろ音楽にしろ将棋にしろ、文章で場の空気を表現できる人は希少なんだなと、改めて感じた。
あと細かい事を言えば、特殊な高校+ランキングシステムとういう設定が作品に合っていなかったように思う。主人公が地道に強くなっていくタイプの長期シリーズや下剋上を狙う話ならこの設定が生きたのだろうけど、元々強い主人公のキャラクターにも、単発の新人賞作品にも相性が悪く、無駄に説明することを増やしただけだった。
好きなジャンルだっただけに期待値を上げ過ぎた面は否めない。でも、新人賞は文章が下手でもストーリーが破綻していても、一点光るセンスが感じられた方が良いと思っているので、そういう観点でも期待外れだったという感想になってしまう。