いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由」有丈ほえる(講談社ラノベ文庫)

救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由 (講談社ラノベ文庫)

天空から飛来した侵略者・アルデヒトにより、人間の大地は蹂躙された。人間たちは生きた機械・クチュールマタを戦力に抗戦する。“救世主”と呼ばれたクチュールマタの少年・リュトは、調整のためコールドスリープに入る。そして彼が再起動した時、世界の様相は一変していた――。大地はヘドロに覆われ、“地球人”として超巨大な樹木の上で暮らすアルデヒトたちは、自分たちが外来種であることすら忘却していた。地球に何が起きたのか。人間はどこへ消えたのか。リュトは自らを掘り出した考古学者の少女・ニナとその助教・アイルにいざなわれ、発掘調査に繰り出す! 救世主パワーで土を掘り、失われた三千年の真実を暴く考古学ファンタジー!!

微妙。
考古学ファンタジーという単語に惹かれて読んだのだが、その考古学関連の部分だけが、異様に詳しく借り物の文章然としていてがっかり。それに文明や科学技術の進歩と発掘作業の技術の乖離も気になる。一生懸命調べたんだろうけど、そこは世界観に合わせてアレンジして自分の文章にしてくれないと。
あと脳内映像化がし難くて読みにくい。特に同じ場所同じもののはずなのに、場面によって周りの風景や物のイメージが一致しないので混乱することが多い。例えばレキホという直径20m超の蜘蛛型多脚ロボットが出てくるのだが、中の居住スペースはその数値通りの広々とした住空間を感じさせるのに対し、後半に巨人とやりあっている時の挙動のサイズ感は何回りも小さい。いいとこ、グラタン(@ふしぎの海のナディア)くらいのサイズにしか感じない。
と、細かいことが気になるくらいには粗ばかりが目に付いてしまう合わない作品だった。
第一印象が悪かったのが致命傷だったかな。考古学者のメインキャラたちが明らかにしていく事実と、滅んだ人類が最後に残したものの秘密が絡むストーリーは読み応えがあり、後半の盛り上がりも悪くなかったので、素直に読めればそこまで悪い印象にはならなかったかもしれない。
それにしても、講談社ラノベ文庫はとことん相性悪いなあ。