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「七姫物語 第六章 ひとつの理想」高野和(電撃文庫)

七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)
七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)

七つの宮都市が割拠する東和の地は、時代の変革期にあった。 争う理由を探し出し、異なる未来図に戦いを仕掛ける一宮、二宮の大連合軍。 双子都市に向けられた中央の大軍に、各地方都市の寄せ集め軍は結束を示す。動乱の最中で、各都市が掲げる平和の巫女姫達は、それぞれの意志を語る。定まらぬ世界のかたち、幾重にも交差する姫影、夏草が匂い立つ季節の中で、複雑に混じり合うのは東和の模様。 そして、一番小さな最後の姫、東和七宮空澄姫が見る世界と人々、その眼差しと笑顔のための物語。第六章開幕。


いつもより激しい東和の世界が、いつものように淡々と描かれる最終巻。
一宮二宮の連立政権と四都同盟の間で勃発する戦争、各陣営の思惑が入り混じる政治的駆け引き、そんなきな臭い世の中が、この作品に流れる穏やかな雰囲気と、カラというフィルターを透すと、若者たちや姫たちが夢を追い求める綺麗なものに化ける。
そんな不思議な感覚の物語のままで最後までいってくれて、満足している自分もいるのだけど、やっぱり終わってしまったかという寂しさの方が大きい。
400ページを超す大ボリュームながら300ページ過ぎても終わりが見えなくて、どうやって終わらせるんだろう、帯には完結ってあるけど実は終わらないんじゃないか(多分に願望含む)と思いながら読み進めた。でも、その先に待っていたのは、納得のラストだった。
穏やかに、でも貪欲に進み続けたカラが見た夢の一つ、憧れのあの人と並んで立てたから、この物語は一旦終わりなんだな。
思い返すとクロハとの偶然の出会いに始まって、彼女と笑い合って終わる、カラのクロハへの一途な想いが通じる物語でもあったんだと思うと感慨深いものがある。二人の会談は和やかなものだったのに、なんでか涙が出そうになった。
カラが笑っている綺麗なラスト。そのことにはなんの文句もないけれど、出来ればもっとこの世界に浸っていたかった。