いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「チェンライ・エクスプレス」百波秋丸(電撃文庫)

チェンライ・エクスプレス (電撃文庫)
チェンライ・エクスプレス (電撃文庫)

アジアの辺境、常夏の小国チェンライ。
人造人間の少年は、事故で失った人間の心を取り戻したかった……。出来損ないの魔女は、恋の魔法を覚えて少年の心を奪いたかった……。
これは、奇妙で愉快で半熟な人外たちが、自らの願いをかなえようと駆ける欲望物語。
死神は自慢のカマを奪いかえしたかった。狼男は大金と宝石を手に入れたかった。人魚は黒歴史を闇に葬り去りたかった。吸血鬼はある女の血が吸いたかった。化け兎は元恋人を殺してやりたかった。アンデッドはどうしても死にたかった。謎の男はみんなの願いを叶えたかった。
──誰かの願いが叶う満月の夜、切ない感動がドミノ倒しのごとく連鎖する。
第18回電撃小説大賞〈最終選考作品〉の極東ファンタジックアクション、必読!

治安のよくない小国チェンライで繰り広げられる人間社会で暮らす人外の登場人物たちによる群像劇。



主要キャラ11名、それも一癖も二癖もある濃いキャラばかり。初めのワクワク感だけは凄かったんだけど……。
全てをコントロールする人物が早々に見えてしまい拍子抜けする中盤、イマイチ集結しきらない後半のアクションシーンは期待したほどの盛り上がりがなく、ラストは多数の伏線を未回収のまま終了、と段々とテンションが下がっていった。
まあ要するに新人賞にありがちな詰め込みすぎて失敗したタイプ。書きたいことを絞れていないので辻褄合わせの尻すぼみエンドになってしまっている。また、物事に対する表現が回りくどくて無駄に文字数が増えている面もあるので、テンポが悪くて読みにくいところもある。
一昨年の『月光』など《最終選考作》に傑作があったりするのでちょっと期待したのだが、この作品は残念ながら新人賞に選ばれなかった作品らしい出来だった。