いつも月夜に本と酒

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「血翼王亡命譚 II ―ナサンゴラの幻翼―」新八角(電撃文庫)

血翼王亡命譚 (2) ―ナサンゴラの幻翼― (電撃文庫)
血翼王亡命譚 (2) ―ナサンゴラの幻翼― (電撃文庫)

王女と護舞官が失踪した――。そう記された歴史の影で、それでも二人の物語は続いていく。
「翼」と呼ばれる古代遺産を探す猫耳娘のイルナに誘われ、ユウファたちはかつて翼人が繁栄を極めたとされる秘境ナサンゴラへ向かうことに。亡命で全てを失い、言血の記憶が呼び起こす終わりなき悪夢に苛まれながらも、ユウファは様々な出会いを通し、己の宿命を見つめ直す。
しかし旅の果てに待ち受けていたのは、街全体が湖の底へ沈むという突然の凶報。一行の運命は「親子」を巡る長大な悲劇へと呑み込まれていく。
そしてその時、ユウファとアルナ、二人を繋ぐ大いなる因果が静かに胎動を始めていた――。

2巻もよかった。
独自の世界観を幻想的に、でも力強く、そして何より切なさを表現するのが本当に上手い。
ストーリーとしては、守るべき主、愛する者、親代わりの師匠、全てを失い生きる目的を失ってしまったユウファが、自分の力で立ち上がる物語。
初めのうちは、正式に旅の仲間になったイルナの献身的な気遣いや、スゥやベオルの様子を見てアルナを失って胸に穴が開いたのは自分だけではないことに気付いたりなど、傷ついた少年の苦しみと癒やしを描くごく普通の話。それが旅先の街で事件に巻き込まれると、グッと雰囲気が増す。
秘境の街ナサンゴラが醸し出す退廃的な空気と多くの謎で引き込んだ後に、悲劇的な真実を突きつけることでユウファ達と一緒に心を痛めているような
中でも強調していたのが「親子」。
ナサンゴラへの案内人として雇った血の繋がらない親子に、親を知らないユウファと家族が崩壊しているイルナが刺激されるところから始まって、最終的に亡きアルナの願いと悲劇の街を守ってきた者の想いが重なる時、物語は最高潮へ。切ない内容はもちろん美しい話の造りにただただ感動。
やっと笑えるようになったユンファだが、次はまた打ちのめされそうな予告で次巻も目が離せない。