いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「はたらく魔王さま! 0-II」和ヶ原聡司(電撃文庫)

はたらく魔王さま! 0-II (電撃文庫)
はたらく魔王さま! 0-II (電撃文庫)

アルシエル率いる鉄蠍族が加わった新生魔王軍内で、待遇への不満から、幹部ルシフェルの謀反が発生!
ルシフェルが向かったのは、マレブランケ族の勢力圏である南方。魔王やカミーオは、最強のハグレ悪魔と恐れられたルシフェルとマレブランケ族との接触を危惧し、南方への進軍を決断する!
魔王軍を迎え撃つのは、頭領格のマラコーダ率いる大軍勢。幻を操り戦場を混乱に陥れる戦術に、魔王たちは大苦戦を強いられる。さらにはマラコーダと組んだルシフェルが敵として現れ――?
魔界統一を目指す魔王のもとに、新四天王が集うまでを描いた『真奥』がまだ『魔王』だった頃のエピソード第II弾!


過去編第二弾。前回の短編集と違って今回は長編で魔王が魔界を統一する過程を描く物語。
アリシエルが魔王にゾッコンになった経緯や、容姿的に悪魔らしい悪魔なファーファレルロやリヴォクォッコが属するマレブランケ族との戦争の様子が語られる。
魔界の話とあっていつでも死と隣り合わせなこのシリーズらしからぬ緊張感が……と言いたいところなんだけど、魔王の口調の軽さとか今も昔も変わらないルシフェルの行動原理の餓鬼っぽさとか、脱力するところがいくつもあるので軽く読めるところがこのシリーズらしくて良いところ。
その象徴的な存在だったのがカミーオの爺さん。魔王の師として台詞も立ち振る舞いも渋くてカッコいいのに、興奮すると小鳥っぽくなってしまう猛烈なギャップ。あれはズルいわ。
それに加えて“今”を描いた序章と断章の脱力感たるや。
あれだけ魔王軍を苦しめたマレブランケ族はちーちゃんに言いくるめられているし、アリシエルの忠誠心もカカオ99%のチョコレートの前ではおまけみたいな話になってしまう。やっぱりこの緩さこそ「はたらく魔王さま!」だ。
本編の今と繋がら話もちらほら出て来て色々と補完していってくれたし、次の本編がますます楽しみ。