いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「いでおろーぐ!6」椎田十三(電撃文庫)

いでおろーぐ!6 (電撃文庫)
いでおろーぐ!6 (電撃文庫)

「遊園地──それは恋愛至上主義の、ひとつの結晶とでもいうべき最悪の施設なのだ!」
反恋愛主義青年同盟部は、完全アウェイの遊園地で調査行動を開始するが……?
「この列車のアトラクションは絶対に怪しいよ」(神明さん)
「子供向け遊具というのは隠れ蓑かも知れません」(瀬ヶ崎)
「薄暗い室内でおさわり……」(西堀)
「スピードが速い施設に何か隠されているのでは」(天沼)
「ティ、ティーカップなんかいいんじゃないかな……」(領家)
さらに女児の策略により高砂は10年後の未来へ、そして何故か異世界に転生!?
話題の反恋愛活動記録、第6弾登場!


シリーズ初の短編集。
遊園地に日記に未来視にリレー小説。何の捻りもないラブコメの定番のオンパレードだが、反恋愛主義のフィルターと強烈な個性のキャラクター達にかかれば、ちゃんと独自の色がでるのがこのシリーズの強み。むしろ独特な文章とキャラクターを生かすためにも、シチュエーションで奇をてらう必要はないだろう。
基本的には非モテの皆さまのライフを削りつつ、高砂−領家両名による早々に爆発して欲しいベタ甘空間でニヤニヤするという相反する楽しさが同居するいつもの「いでおろーぐ!」。短編である分、その部分が強調されているような気もする。
そして今回のMVPは瀬ヶ崎。そろそろお巡りさんが出て来てもおかしくない。




第1章 幻想の具現化――興行場に見る恋愛信仰とその批判的解体
内容:反恋愛主義青年同盟部、遊園地へ
調査と言いつつ普通に楽しんでいるメンバーの図はいつも通りだが、場所が場所なだけに非リア特有の古傷が深く、高砂の中学時代の痛い記憶にガリガリHPを削られる。その上、現在進行形の宮前のぼっちにさらに削られるというダメ押しのおまけ付き。皐ちゃんもうやめて! 宮前さんと読者さんのライフはゼロよ! 





第2章 系統的記録による分析手法、その主観的限界の彼岸
内容:女児(自称神)の秘密を探る高砂の観察記録
事情は分かるし文章も堅いが、実質は兄による妹の観察日記。気持ち悪いです。
と思っていたらそんなもの些細な事と思わせるだけの劇物が混じっていた。
日記の方は女児による仕返しの暴露でニヤニヤ出来る内容で収まるのに、劇物の方には何の緩和にもならなかった。
結論:瀬ヶ崎ヤバい!





第3章 仮想と幻想:恋愛至上主義と最新技術の融合に抗するために
内容:女児(神)に自分の未来を見せられる高砂
高砂の未来がハッピールートもバッドルートも攻撃力が高すぎる。
バッドはただひたすら悲惨で胸が痛い。ただ、修羅と化した高砂のその後はちょっと見てみたい気も。
ハッピーも幸せオーラが非モテには毒。5年後10年後はニヤニヤできるエピソードだったけど、一年後三年後のこれは流石に爆発案件だろう。
で、このオチか! これはどう転んでもバッドルートにはいかないじゃないか。チッ





第4章 文芸を用いた反恋愛プロパガンダの有用性とその実践
内容:学内の小説コンクールに参加する為、皆でリレー形式で小説を執筆
作品は「流行りの異世界転生もの」のはずなのに、転生する前の領家パートの生々しさにノックアウト。転生後のメンバーの趣味丸出し小説がどんなに酷い内容でも、それが癒やし感じる程に恐ろしい出来だった。薫ちゃんがどれだけ現実に裏切られて生きてきたんだろうと心配になるわ。