いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 (電撃文庫)

嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん入間人間電撃文庫
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん―幸せの背景は不幸 (電撃文庫 い 9-1)

御園マユ。
僕のクラスメイトで、聡明で、とても美人さんで、すごく大切なひと。彼女は今、僕の隣にちょこんと座り、無邪気に笑っている。
リビングで、マユと一緒に見ているテレビでは、平穏な我が街で起こった誘拐事件の概要が流れていた。誘拐は、ある意味殺人より性悪な犯罪だ。殺人は本人が死んで終了だけど、誘拐は、解放されてから続いてしまう。ズレた人生を、続けなければいけない。修正不可能なのに。理解出来なくなった、人の普通ってやつに隷属しながら。
──あ、そういえば。
時間があれば、今度質問してみよう。
まーちゃん、キミは何で、あの子達を誘拐したんですか。って。

幼少時誘拐された経験のあるみーくんとまーちゃんのいる街で起こる殺人事件と誘拐事件。一人の少女を守るために嘘をつき続ける少年の物語。


不幸な背景のわりには明るい内容。軽くはないけど。一番病んでたのはカバーの裏かも。また話の真実が語り手のみーくんの嘘つきな性格でぼやかさせているものの、案外真偽は分かりやすく書かれている(というかみーくんが分かりやすい性格をしている)のも話が暗くない要因かも。もっとダークでもっと曖昧でも良かったなぁと。
この話を楽しむポイントはみーくんと恋日先生(精神科医)、みーくんと奈月さん(警察)の会話だと思う。それぞれ単体でも面白いが(特に後者の狐と狸の化かし合いのような会話のシュールさがなかなか)、対比させてみるとわざとばらす為の嘘と本心を隠すための嘘を使い分けられていて、みーくんの心情が分かるようになっているのが興味深い。
まーちゃんは噂に違わぬヤンデレぶりだった。ただ基本的にみーくんと一緒にいて常にデレ状態なのと初めから壊れている関係で、デレ部分のインパクトは強かったけどヤン部分のインパクトはイマイチ。やっぱり作中で壊れたり、突如表面化したりするのがヤンデレの醍醐味だと思うんだけど。
全体的には読後感も悪くないし楽しめるポイントもあったのでなかなか面白かったけど、インパクトという面から見るとちょっと拍子抜けだったかな。