いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



きつねのはなし

きつねのはなし森見登美彦(新潮社)
きつねのはなし

細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々に起こる怪異の結末は――。
端整な筆致で紡ぐ、妖しくも美しい 幻燈に彩られた奇譚集。

森見登美彦が紡ぐ、現代の「百物語」 全四編


普通に面白かった。でも普通すぎるような。現実と虚構を曖昧に表現する手法は他の作品と変わらず流石の上手さなのだけど、他の作品で見られたような独特の言い回しが影を潜めてしまっているのが残念。(といっても「太陽の塔」と「夜は短し歩けよ乙女」しか読んでないけど)
全四編のうち、初めの『きつねのはなし』はこの作者らしく京都を全面に出しつつ、百物語っぽい得体の知れない不気味さがあって面白く物語に引き込まれる感じがあった。次の『果実の中の龍』も百物語にしては怖さ不気味さはないもののなかなか良かったが、後の2編はいまいちピンとくるものがなかった。
うーん、やっぱりあの独特な言い回しを読まないと森見さんの作品を読んだ気がしないなぁ