いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



魔法少女を忘れない (スーパーダッシュ文庫)

魔法少女を忘れない」しなな泰之スーパーダッシュ文庫
魔法少女を忘れない (集英社スーパーダッシュ文庫)

「――僕には、妹のことがわからない」
ある日突然やってきた妹、みらいと共に過ごすようになって半年。高校生・北岡悠也は、まだ彼女との距離感を掴めずにいる。わからないことだらけの妹について、知っているのはたったひとつ――みらいが昔、“魔法少女”であったこと。自分の知らない世界を生きてきた少女に、兄として向き合う奇妙な日常。幼なじみの千花や親友の直樹、その助けを借りながら、季節は移ろい巡ってゆく。忘れ得ない大切な日々を分け合う、四人の少年少女の物語。悠也は魔法少女を忘れない。


切なく泣ける青春ラブストーリー。
初めは高校生なのに小学生のように純真で無垢な兄妹のせいかぼのぼのムード。切なさといえば悠也の幼馴染みの千花の秘めた想いくらい。
それが魔法少女とは何なのかが分かっていくにしたがって、物語の雰囲気が変わっていく。
すれ違いや想いが伝わらないもどかしさは恋愛ものの醍醐味ではあるけど、そこに元魔法少女のみらいの境遇が合わさると、出てくるのは焦燥感と言いようの無い切なさ。
それぞれの知らないという残酷さに加えて、悠也はその優しさと鈍感さ、みらいは無垢さと諦め、千花は不器用さゆえにすれ違い傷つけ合っていく様は痛々しくてしょうがない。中でも一番本心が読みやすく感情移入がしやすかったのが千花だったので、千花の不器用な愛情表現と我慢強さの先に出てきた告白シーンは涙が出そうだった。
そんな彼らが本心をぶつけ合って迎えたラストシーンもどうしようもなく切ないけれど笑顔でいられる、そんな綺麗なラストで読後感も悪くない。
前作「スイーツ!」は全く肌に合わなかったけどこれは良かった。