いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「一人ぼっちの王様とサイドスローのお姫様」柏葉空十郎(メディアワークス文庫)

ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様 (メディアワークス文庫)
ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様 (メディアワークス文庫)

三年ぶりに帰国し、日本の高校に入学した綾音。彼女には幼馴染みの巧也と野球をするという目的があった。そう、甲子園を目指すのだ!
中学時代、巧也はシニアの世界で活躍し、全国区の有名な選手に成長していた。だが、再会に胸躍らせる綾音の目の前にいたのは、想像していたのとは全く違う巧也だった。
冷淡に「野球はやめた」と言い捨てる巧也に戸惑いを隠せない綾音。彼女は巧也に野球をやらせるべく猛アタックを始めるのだが――。
爽快な野球小説の登場!!


小説を、物語を読みたかったんだけどなあ・・・
野球を知らない人のために丁寧に作られているのは分かるが、残念ながら野球ファンが物語を楽しめるようには作られているとは思えない。重度の高校野球ファンの自分には全く楽しめなかった。
とにかく説明過多の一言に尽きる。
前半分は小説じゃなしに小中高の野球事情について書かれた新書でも読んでいるよで、後半の試合になると今度は配球などの野球知識講座が始まってしまう。それらの説明が既知である野球ファンにとっては、話の流れ、リズムを阻害するものでしかなく、脱線に次ぐ脱線にうんざり。特に綾音が巧也を説得するシーンや試合の盛り上がる場面では説明が邪魔で仕方が無い。
そして、その説明に弾かれたかのようにスポ根ものにとって最重要の特訓は省かれ、最後も完全な尻すぼみ。
せっかく女子も甲子園に出れるという仮想世界なのだから、野球の知識ではなしにもっと男女入り混じって真剣に野球する姿が読みたかった。青春野球小説なあらすじと500ページ超のボリュームを見てかなり期待していただけに失望感が大きい。