いつも月夜に本と酒

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「“文学少女”と恋する挿話集3」野村美月(ファミ通文庫)

“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫)
“文学少女”と恋する挿話集3 (ファミ通文庫) (ファミ通文庫 の 2-7-3)

恋に破れた「炎の闘牛」、柔道部の牛園くん。それでも遠子を思いきれず、思い出が欲しいと心葉に詰め寄り……『"文学少女"と炎を上げる牛魔王ミノタウロス】』、クラスにも、気安い笑顔を向けてくる担任の竹田千愛先生にもなじめない中学生の仔鹿だが──『迷える仔鹿【バンビ】と嘘つき人形【ドール】』ほか、遠子の想いを目にした紗代や、夕歌と毬谷先生の出会いなど、甘くほろ苦いエピソードが満載! 物語を食べちゃうくらい愛する"文学少女"と、彼女を取り巻く人々の、恋する挿話集第3弾!!


これまでの挿話集の中で最も本編の雰囲気に近い、“文学少女”らしい重さのある短編集。
シリーズ中最も重い「穢名の天使」の少し前の話では、夕歌の束の間の幸せに涙がこぼれ、大人になった千愛の話では、あの千愛の予想外の言葉に胸を締めつけられる。でも、どの話にもちゃんと最後に救いがあってホッともする。
挿話集に見習いとこのところ明るめの話が多かったけど、この雰囲気こそ“文学少女”。久々に味わった気がする。



表紙の千愛の目がちょっと怖い。この子らしいといえばらしいけど。



以下各話毎
“文学少女”と炎を上げる牛魔王
内容:牛魔王の告白
牛園さんがカッコよすぎて泣ける。あんたは男の中の男だ。
それに引きかえ文芸部の先輩後輩ときたら、、、鈍感と言う凶器は恐ろしい。



“文学少女”の今日のおやつ 〜『好色五人女』〜
内容:遠子先輩のラブレター?
口では言えないことを手紙にしたためるのはもっとハードルが高いような(^^;
でもまあ、メールに置き換えればわからなくもないか。



“文学少女”と恋しはじめの女給
内容:「月花を孕く水妖」の紗代視点
遠子がこんなにはっきり自分の胸の内を語ったのは初めてなのでは?
あの一言だけで幸せな気分になった。



“文学少女”の今日のおやつ 〜『谷間』〜
内容:真っ赤な折鶴の意味は?
数々の名前の中でレイくんの残念さ加減が際立ってるw ○点か・・・うわぁ←伏字のようで伏字になっていない件
タイトルの『谷間』でまたぺったんこネタか!と思ったのは私だけではないはず。



傷ついた紳士と穢れなき歌姫
内容:夕歌と毬谷の出会い。
その後の切なく遣る瀬無い悲劇を知っているだけに、この束の間の幸せは涙が出る。
この偶然の出会いがなければ、なんて意味の無いことを考えてしまう。
ななせの出番はここだけ。無念。。。



卵の歌姫と彷徨える天使
内容:毬谷のその後。
これは救いだったのか罰だったのか。
あまり救いと思えない自分は捻くれているんだろうか。う〜ん。



遠子おばタンの秘密
内容:麻貴と流人の子を見に来た遠子
怖っ!
嫁による姑イジメに戦慄。いや、結婚してないけど。
直接的だと興醒めだけど、こういう匂わせるだけのアフターストーリーっていいね。



迷える仔鹿と嘘つき人形
内容:不良少女と竹田先生
千愛が先生になっていたことも驚いたけど、それ以上に千愛の

「ウソでも、本気でホントウの振りをしていたら、いつかはホンモノになるかもしれないよ」

が衝撃だった。頭をガツンと殴られたような衝撃。
前を向けていることに喜んでいいのか、「かもしれない」の部分に悲しんでいいのか、複雑な気分。



頑張る仔鹿と臆病な旅行者
内容:迷える仔鹿と嘘つき人形の続き。
心の強さというか人間として強さというか、仔鹿ちゃんはシリーズ最強キャラではないだろうか。
彼女の強さが塞ぎこんで停滞する周りの人達を動かしていく様子に心打たれる。
仔鹿ちゃんと堀井の関係にはもの凄い既視感が。どこで読んだんだろう?



道化のつぶやき
内容:頑張る仔鹿と臆病な旅行者の千愛視点。
後ろ三つ、というかこの本のメインは千愛だった。
彼女はこれでホンモノを見つけられるかな?