いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ファンダ・メンダ・マウス」大間九郎(このライトノベルがすごい!文庫)

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)
ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫 お)

おれはマウス。しみったれた倉庫でくそったれなAIシステム相手に終日ダラ〜っと、家に帰ればネーネがべったり。そんな毎日。でも、おれは今の自分にかなり満足。いい女はべらして万ケンシャンパドンペリジャンジヤンBMベンツにPMゲッツーみたいなことが必要だとは思わない――のに! 「嫁に!」とか言い出すジャリ娘の登場から怒濤の急展開だよ!!
独特で中毒性の高い文体、鳥肌ものの展開。全選考過程で物議を醸した作品が登場!

第1回『このライトノベルがすごい!』大賞栗山千明賞作品


受賞時の選評を読んだ限りでは相当読みにくいものが出てくるんだろうと身構えて読んだのだが、読みにくさはあまり感じなかった。まあ、言っちゃ悪いが頭の悪そうな文章ではあるけど。これならライトノベルではよく見られる、その小説特有の漢字の造語や、全く違う読みのルビが付けられてる方がよっぽど読みにくい。



さて内容は、


なにこのかっこいい男。惚れるわ。
とにかく主人公のマウスにつきる。ハードボイルドでめちゃくちゃ男前。初めのうちは喧嘩っ早いチンピラにしか思えないが、彼の強さ、人間味、信念が見えてくると、もうかっこいいとしか形容できなくなる。
そんなマウスが暴れまわる舞台は今とは少し様子の違う横浜。
前半は何が起きているのか、どんな世界観なのか掴めないまま進むのがもどかしいが、その分キャラの個性に惹かれる。マウスを筆頭に大変残念な姉に暴力少女、何故かデレデレの女性以外の人たちと、個性的というよりアクの強い人たちばかりで興味も笑いも尽きない。
起きている事件が把握できてからは、二転三転する展開に惹きつけられる。事件のまさかの結末に度肝を抜かれ、羨ましいような気の毒なようなエピローグに笑い、最後の最後まで楽しかった。面白かった。
どうしても独特な文章が目を引くが、ヒーローはしっかり活躍し、ヒロインはいっぱい、笑いとシリアスのバランスも良くエンターテイメント性の高い作品。導入部の文章に嫌悪感を抱かなければ、楽しめること請け合い。



一番いい女だったのはくそったれこと『ブレイン』で間違いない。異論は認める。