いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「カナクのキセキ1」上総朋大(富士見ファンタジア文庫)

カナクのキセキ1 (富士見ファンタジア文庫)
カナクのキセキ1 (富士見ファンタジア文庫)

千年前、マールと呼ばれる深紅の髪の魔女がいた。マールは、世界を放浪しながら“魔法”を
人々に授けた尊き女性だ。魔法学校を卒業した僕・カナクは、ある目的を秘め、彼女が大陸各地に遺した石碑を独りで巡ることを決意した、のだけど……。
「とにかく、私はあなたの石碑巡りについて行くって決めたの!」
学校一の魔法の天才にして美少女、そしてセレンディア公の娘と三拍子揃ったユーリエが、なぜだか突然ブチ切れ、僕の旅に同行することに。それは、甘く切ない恋の道のり、そして、思いがけない真実へと至る不思議な旅の始まりだった!
胸震わす第22回ファンタジア文庫大賞〈金賞〉受賞作。


あーもう! これほどのもったいない感を味わった作品は他にあるだろうか。
キャラは文句なし。控えめな主人公・カナクと奔放なヒロイン・ユーリエのコンビが相性バッチリでコメディでも恋愛でも楽しませてくれる。 脇役達も出番は短いが味のあるキャラばかり。
さらに良いのはストーリー。胸躍るはずの二人の旅路と恋路、切なさ全開のはずのラストなど、王道ながらも綺麗なストーリーラインで普通なら感動間違いなし。
だったのに・・・。
なんでこんなに、どれもこれもネタバレが早すぎるんですか? この作者せっかちなのか、秘密にしておけない性質なのか。
予定調和が悪いとは言わないけど、物語を楽しむにあたり、どこかで予想外の出来事に驚かされたりワクワクしたりしたいじゃない。「な、なんだってー!」ってなりたいじゃない。その芽を潰すようになんでも説明してしまうので、大変や困難と言う言葉の割には淡白で苦労のない旅路も相まって、必要以上に淡々とした物語になってしまっている。
中でも一番やってはいけなかったのが禁忌の魔法のネタバレ。それの中身を明かしちゃったらオチが読めちゃうじゃない。存在だけを明かしておけば十分だって。最後の切なさが半減以下だよ。
初めから続刊が決まっているなら、この巻は旅の様子を増量し分冊してネタバレも自重すれば傑作になったはずなのに。いやもう、ホントにもったいないという感想しか出ない。ある程度の焦らす/引っ張るは大事なんだなと実感した。