いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「夢の上2 紅輝晶・黄輝晶」多崎礼

夢の上〈2〉紅輝晶・黄輝晶 (C・NOVELSファンタジア)
夢の上〈2〉紅輝晶・黄輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

夢売りは三つ目の彩輝晶を手に取った。
「心の炎――その情念がかくも美しい紅輝晶を生む」
夢売りの声が響く。
「これは身を焦がす炎。成し遂げられぬ夢。誰よりも熱く、激しい夢に身を焦がした『復讐者の遺言』」
その生涯を賭して挑んだ夢が語られる。


ふぅ
2巻もやはり傑作だった。もう完全に大作を読み終えたときの読後感。物語への引き込み力が半端じゃない。
驚くほど登場人物が増えなかった。完全にこの枠だけで話が進むのか。枠が広がらなかった分、事実も想いも濃密に繋がっていく。そこに引き付けられた。


紅輝晶はシアラ(アライス)の母、ハウファの復讐の物語。
スタートから遣る瀬無さ全開で怒りと切なさで胸が締め付けられるが、それが衰えることなく話が突き進む。どんなに復讐の火が強くなってもどんな悪夢を見ようと、狂わずあくまで理性的に復讐を遂げようとするハウファの姿には、強さと言うより怖さを感じるほど。
そんな彼女の復讐劇は1巻で示された事実の通り目的は果たせなかったけれど、最後の最後に一つ大事なものを取り戻せた、無念でだけで終わらなかったラストに、ほんの少しだけ救われた気分になった。


黄輝晶は影憑きダカールの物語。彼から見たシアラの姿がメイン。
騎士を目指す女性を最も近くで見る男性視点ということで、アーディンからイズガータを見た蒼輝晶と似た状況だが、性格の違いから最後まで幼さが残る全く別の雰囲気がある。また、強さが目立ったイズガータと比べて、シアラの弱さと種類の違うの強さが感じられる。
そして第四章にしてついに語られる戦争後の出来事。
明確な別れではなかった蒼輝晶に対して、黄輝晶のラストの切なさは比べ物にならなかった。・・・というか、なんでここで止めるんですか! なんて殺生な。


次は二人の王子の話。ついにシアラの視点からこの物語が語られるのか。・・・ん? 闇も王子? 聴き手の王はあの人じゃないのか? その辺りの謎も終幕への鍵になったりするのだろうか。とにかく5月が待ち遠しい。